広頸筋(こうけいきん)のゆるみと首のシワ|顔の皮膚を下に引っ張る「首の筋肉」

広頸筋(こうけいきん)のゆるみと首のシワ|顔の皮膚を下に引っ張る「首の筋肉」

鏡を見たとき、以前よりもフェイスラインがぼやけたり、首元に年齢を感じさせる縦筋や横ジワが増えたと感じることはありませんか。

その原因の多くは首全体を覆う薄く広い筋肉「広頸筋(こうけいきん)」のゆるみと収縮にあります。広頸筋は単に首を動かすだけでなく、顔の下半分の皮膚と筋肉を下方向へと強く引っ張る性質を持ちます。

この筋肉が加齢や姿勢の悪化によって硬く縮んだり、逆にゆるんで垂れ下がったりすることで、首のシワだけでなく口角の下がりや二重あごを引き起こします。

本記事では、この「顔を下に引っ張る筋肉」の正体を解明し、若々しい首元とフェイスラインを取り戻すための具体的な知識と対策を網羅的に解説します。

目次

広頸筋の構造と顔面への影響力

広頸筋は首の表面を覆う薄い膜状の筋肉であり、その活動が顔の下半分を物理的に下へと引き下げる主要な要因です。

解剖学的な視点から見ると、この筋肉は鎖骨周辺から始まり、顎の骨を超えて口角付近の皮膚や筋肉(SMAS)と直接つながっています。そのため、広頸筋が過剰に緊張したり、逆に加齢によって弾力を失い垂れ下がったりすると、直結している顔の皮膚も道連れにして下垂させます。

顔のたるみケアを考える際、顔面だけでなく首の筋肉の状態を把握することが重要です。

広頸筋の解剖学的な特徴と位置

広頸筋は人体の中でも非常にユニークな特徴を持つ筋肉です。多くの筋肉は骨と骨をつないで関節を動かしますが、広頸筋は「皮筋(ひきん)」と呼ばれ、皮膚に直接付着しています。

具体的には、大胸筋や三角筋の上部にある筋膜から起始し、首の前面を薄く広く覆いながら上昇し、下顎骨の下縁や口角周辺の皮膚停止します。この構造ゆえに広頸筋が収縮すると首の皮膚が持ち上がるだけでなく、口角が下へ引っ張られます。

驚いたり恐怖を感じたりしたときに首に筋が立つのは、この筋肉が瞬間的に強く収縮している証拠です。皮膚と密着しているため、筋肉の衰えやこわばりがダイレクトに肌表面の形状変化として現れます。

顔の皮膚を下へ引っ張るメカニズム

日常の表情のクセや重力の影響を受け、広頸筋は常に下方向へのベクトルを持っています。特に重要な点は広頸筋が顔の表在性筋膜群(SMAS)と連続している事実です。

SMASは顔のたるみ治療で重視する組織ですが、これが広頸筋とつながっているため、首の筋肉が重力に負けて下がると頬や口元のたるみを加速させます。

「イー」と口を横に引いて首に筋を立ててみてください。そのとき口角が下がり、フェイスラインが下に引っ張られる感覚があるはずです。

この力が日常的に慢性化すると、マリオネットラインやブルドッグ顔の形成を助長してしまいます。

他の首の筋肉との役割の違い

首には広頸筋以外にも、頭を支えたり回転させたりするための強力な筋肉が存在します。

代表的なものが胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)です。胸鎖乳突筋は骨格を動かすための太く強い筋肉であり、首の回旋や屈曲を担います。一方で広頸筋は骨を動かす力は弱く、主に皮膚の動きや表情形成、下顎の微妙な引き下げに関与します。

エイジングケアの観点では胸鎖乳突筋は「首の形や姿勢」に、広頸筋は「首の表面の質感やシワ、顔のたるみ」に深く関わります。

両者の違いを理解し、特に皮膚表面のたるみに対しては広頸筋へのアプローチを優先することが大切です。

広頸筋と胸鎖乳突筋の違い

筋肉名主な役割美容への影響
広頸筋口角を下げる、首の皮膚を緊張させる首のシワ、たるみ、口角の下垂
胸鎖乳突筋首を回す、頭を傾ける、呼吸の補助首の太さ、姿勢、ストレートネック
僧帽筋肩をすくめる、首を後ろに反らす首の長さの見え方、肩こり

広頸筋がゆるむ原因と悪化させる生活習慣

広頸筋が衰えたり硬化したりする背景には加齢による自然な変化だけでなく、現代人特有の生活習慣が大きく関与しています。

筋肉は使わなければ衰え、使いすぎれば硬くなる性質を持ちますが、広頸筋においてはその両方が同時に起こり得ます。特にデジタルデバイスの普及による姿勢の変化は広頸筋の機能を著しく低下させ、若年層であっても首のシワやたるみを引き起こす主因となります。

日常の何気ない動作が、時間をかけて首元の老化を進行させている事実に気づくことが大切です。

スマートフォンの長時間使用と姿勢

スマートフォンを操作する際、多くの人は無意識に頭を前に倒し、下を向く姿勢をとります。この状態が続くと広頸筋は常に縮んだ状態で固定されるか、あるいは重力によって不自然に引き伸ばされた状態が続きます。

頭の重さは約5キログラムあり、うつむく角度が深くなるほど首への負担は増大します。この姿勢が定着すると広頸筋の柔軟性が失われ、首の前面に深い横ジワが刻まれる原因となります。

また、猫背になることでデコルテ部分が圧迫され、リンパの流れが滞り、首元のむくみやたるみを助長するという悪循環も生じます。

無意識の食いしばりと表情のクセ

ストレスや集中時に奥歯を強く噛み締める「食いしばり」のクセは広頸筋に過度な緊張を強いる要因です。噛み締める動作は咬筋(こうきん)だけでなく、連動して首の筋肉にも力を入れさせます。

鏡を見ながら奥歯を噛み締めてみると、首にうっすらと筋が浮き出ることが確認できます。この緊張状態が長時間続くと、広頸筋が肥大化・短縮し、首に縦方向の太い筋(プラティスマバンド)を作り出します。

また、会話の際に口角を下げるクセがある人も広頸筋を過剰に収縮させており、フェイスラインの崩れを早める傾向にあります。

加齢による筋繊維の萎縮と皮膚弾力の低下

年齢を重ねると全身の筋肉と同様に広頸筋も萎縮し、薄くなります。筋肉のボリュームと張りが失われると、それを覆っている皮膚を支えきれなくなり、重力に従って垂れ下がります。

さらに、皮膚自体のコラーゲンやエラスチンが減少することで弾力が低下し、ゆるんだ筋肉の形状がそのまま皮膚表面に現れやすくなります。

特に閉経後の女性はホルモンバランスの変化により皮膚が薄くなる傾向があり、広頸筋の輪郭が浮き出やすくなるため、いわゆる「ターキーネック(七面鳥の首)」と呼ばれる状態になりやすいのです。

広頸筋に悪影響を与える主な要因

  • 長時間の下向きスマホ操作
  • 睡眠時の高すぎる枕の使用
  • 奥歯の食いしばりや歯ぎしり
  • 口角を下げて話す表情のクセ
  • 紫外線による皮膚の光老化

首のシワの種類と広頸筋との関連性

一口に首のシワと言っても、その形状や発生メカニズムは一様ではなく、広頸筋の状態によって現れ方が異なります。

一般的に気にする人が多い「横ジワ」と、加齢とともに目立ち始める「縦ジワ」では、広頸筋の関わり方が対照的です。

自分の首に現れているサインがどのタイプに当てはまるかを見極めることは、適切なケア方法を選択する上で非常に重要です。ここでは、シワのタイプ別に広頸筋がどのように影響しているかを詳細に紐解きます。

横ジワ(ネックレスライン)の成因

首の横ジワは、別名ネックレスラインとも呼ばれ、広頸筋の機能低下や皮膚の折り畳み癖によって生じます。これは必ずしも加齢だけが原因ではなく、子供や若い世代にも見られる特徴があります。

広頸筋と皮膚の結合が強い部分と弱い部分の境目がシワとして現れる先天的な要素もありますが、後天的な主な原因は「姿勢」です。

枕の高さが合っていない、長時間下を向いているといった物理的な圧迫が繰り返されることで、形状記憶のようにシワが定着します。広頸筋が衰えて皮膚を支える力が弱まると、この折り目がより深く、消えにくくなります。

縦ジワ(プラティスマバンド)の正体

年齢を重ねた首に見られる、顎下から鎖骨に向かって走る垂直の筋をプラティスマバンドと呼びます。これは広頸筋の過剰な収縮と、筋肉の端が遊離して目立つようになった状態です。

広頸筋の前縁部分が硬くなり、まるでカーテンのドレープのように浮き出てきます。痩せ型の人や日常的に首に力を入れるクセがある人に顕著に現れます。

この縦ジワは単なる皮膚のたるみではなく「筋肉の変形」であるため、化粧品などの表面的なケアでは改善が難しく、ボトックス注射などの筋肉の動きを抑制する治療が適応となるケースが多いです。

ちりめんジワと皮膚の質感変化

広頸筋の衰えに加え、紫外線ダメージや乾燥が重なることで発生するのが、首全体の細かいうねりのような「ちりめんジワ」です。広頸筋の上がのっぺりと平坦になり、その上の皮膚が余ってしまうことで生じます。

首の皮膚は顔に比べて薄く、皮脂腺も少ないため、乾燥しやすく防御機能が弱いです。筋肉の張りが失われると皮膚が内側からパンと張る力を失い、和紙を揉んだような細かいシワが全体に広がります。

これは筋肉トレーニングだけでなく、表皮・真皮への保湿や再生アプローチが必要な状態です。

首のシワタイプ別特徴

シワの種類主な原因広頸筋の状態
横ジワ姿勢、枕の高さ、皮膚の折り癖柔軟性低下、皮膚との癒着
縦ジワ加齢、痩せ型、筋肉の緊張過剰収縮、筋縁の遊離
ちりめんジワ紫外線、乾燥、皮膚の余り筋ボリュームの減少、萎縮

自宅で可能なセルフチェック法

自身の広頸筋がどのような状態にあるのか、またフェイスラインへの悪影響がどの程度進んでいるのかを客観的に把握することは、早期対策の第一歩です。

特別な器具を使わずとも、鏡の前での簡単な動作で筋肉の緊張度やゆるみ具合を確認できます。

ここでは、誰でも数分で行えるセルフチェックの方法を紹介します。現在の状態を正しく認識することで、必要なケアがストレッチなのか、筋力強化なのか、あるいはリラックスなのかを判断する材料になります。

「イー」の口での筋肉確認テスト

鏡を正面に置き、歯を食いしばるのではなく、下顎の歯が見えるように「イー」と口を横に大きく広げ、同時に首に力を入れてみてください。このとき、首の前面に縦に走る筋が浮き出るのが確認できます。これが広頸筋です。

もし、左右で筋の出方に大きな差があったり、筋が太く隆起しすぎていたりする場合は、普段から無意識に首に力を入れている可能性があります。

逆に、力を入れても筋肉の動きが鈍く、皮膚だけがだらんと下がるようであれば、広頸筋が衰弱し、ゆるんでいるサインと捉えます。

ピンチテストによる皮膚弾力の確認

首の中央部分や側面の皮膚を親指と人差指で軽くつまんで持ち上げ、パッと離してみてください。健康でハリのある広頸筋と皮膚であれば、瞬時に元の状態に戻ります。

しかし、戻るのに時間がかかったり、つまんだ跡がしばらく残ったりする場合は、広頸筋のサポート力が低下し、皮膚自体の弾力性も失われている証拠です。

また、つまんだ時に皮膚が非常に薄く伸びる感覚がある場合、皮下組織が菲薄化しており、シワが定着しやすい状態にあるといえます。

上向き動作での突っ張り感チェック

背筋を伸ばし、ゆっくりと天井を見上げるように顎を上げていきます。この動作をした際に鎖骨から顎にかけて強い突っ張り感や痛みを感じるかを確認してください。

もし、首の前側が突っ張って顎を上げにくい、あるいは口が自然と開いてしまう場合は、広頸筋が短縮し、硬くなっている可能性が高いです。

柔軟な広頸筋であれば、無理なく天井を向くことができ、デコルテから顎にかけてのラインが滑らかな弧を描きます。突っ張り感が強い人は、日頃の猫背姿勢により筋肉が縮んだまま固まっていると考えられます。

広頸筋の状態セルフチェックリスト

  • 「イー」とすると太い縦筋がくっきり出る
  • 首の皮膚をつまむと戻りが遅い
  • 天井を見上げると首の前が痛い
  • リラックス時でも口角が下がっている
  • 顎下を触るとタプタプとした柔らかさがある

広頸筋をケアする日常の対策とトレーニング

広頸筋の衰えやこわばりを解消し、首のシワと顔のたるみを予防・改善するためには、毎日の地道なケアが大きな力を持ちます。重要なのは、筋肉を「鍛える」ことと「緩める」ことのバランスです。

硬くなっている人はストレッチで柔軟性を取り戻し、ゆるんでいる人は適度な刺激でハリを与えます。また、広頸筋は皮膚と密接しているため、スキンケアによる保湿や紫外線対策もセットで行うことで相乗効果が生まれます。

自宅で手軽に取り入れられるメソッドを具体的に解説します。

広頸筋リリースのストレッチ手法

硬くなった広頸筋をほぐすには、鎖骨周辺を固定して伸ばすストレッチが有効です。まず、右手のひらを左側の鎖骨の下に置き、皮膚を軽く下へ押さえます。

そのまま頭を右斜め後ろへゆっくりと倒し、左の首筋から顎にかけてが気持ちよく伸びるのを感じてください。この状態で10秒から15秒キープします。反対側も同様に行います。呼吸は止めずに深呼吸を続けることが大切です。

さらに、舌を天井に向かって突き出す動作を加えると、広頸筋の上部や舌骨筋群も同時に刺激され、二重あごの解消にもつながります。

姿勢改善と生活環境の見直し

トレーニング以上に重要なのが、原因となる悪姿勢の断つことです。

スマートフォンを見る際は脇にこぶしを挟むか、反対の手で肘を支えるなどして画面を目の高さまで上げる習慣をつけます。パソコン作業時はモニターの高さを調整し、顎を引いて背筋を伸ばすポジションを維持します。

また、就寝時の枕の高さも重要です。高すぎる枕は首を強制的に屈曲させ、一晩中シワを刻み込むことになります。首のカーブに合った、あるいはバスタオルで高さを微調整できる枕を選び、首前面が圧迫されない寝姿勢を確保します。

首専用のスキンケアと紫外線対策

顔のケアは念入りに行っても、首は化粧水のついで程度で済ませてしまう人が少なくありません。

しかし、広頸筋上の皮膚は薄く乾燥しやすいため、首専用のネッククリームや顔用と同じ美容液をデコルテまでたっぷりと塗布することが大切です。塗布する際は、下から上へと筋肉の流れに沿って優しくなじませ、リンパの流れも意識します。

また、紫外線はエラスチンを破壊し皮膚の土台を崩すため、外出時は顔だけでなく首の後ろやデコルテまで日焼け止めを塗ることを徹底し、ストールなどで物理的に遮断することも有効です。

広頸筋ケアのデイリールーティン

タイミング行うべきケア内容目的
朝(洗顔後)日焼け止めの塗布、上向き保湿紫外線防御、乾燥予防
日中(仕事中)スマホ位置の調整、首の回旋運動姿勢矯正、血行促進
夜(入浴後)鎖骨押さえストレッチ、舌回し運動筋肉の弛緩、筋力強化

美容医療による非侵襲的アプローチ

セルフケアだけでは改善が難しい深いシワや顕著なたるみに対しては、美容医療の力を借りることも選択肢の一つです。近年ではメスを使わず、ダウンタイム(回復期間)の少ない治療法が数多く開発されています。

広頸筋に直接作用して過剰な動きを止めたり、熱エネルギーを与えて引き締めたりすることで、効率的に若々しい首元を取り戻すことが可能です。

ここでは、代表的な切らない治療法について、そのメカニズムと期待できる効果を解説します。

ボツリヌストキシン注射(ボトックス)の効果

広頸筋の縦ジワ(プラティスマバンド)に対して、最も即効性があり一般的に行われる治療がボツリヌストキシン注射です。

この薬剤には筋肉の収縮を抑制する作用があり、緊張して浮き出た広頸筋に注入することで筋肉をリラックスさせ、縦ジワを目立たなくさせます。

また、「広頸筋ボトックス」や「ネフェルティティリフト」と呼ばれる手法では、顔を下に引っ張る広頸筋の力を弱めることで相対的に顔を引き上げる筋肉(リフトアップ筋)の働きを優位にし、フェイスラインをシャープにする効果も期待できます。

HIFU(高密度焦点式超音波)による引き締め

HIFU(ハイフ)は超音波の熱エネルギーを皮膚の深層や筋膜(SMAS)にピンポイントで照射し、熱凝固を起こさせる治療です。

広頸筋とその上の皮膚に対して熱ダメージを与えることで創傷治癒過程でのコラーゲン生成を促し、組織をギュッと収縮させます。

これにより、ゆるんだ広頸筋と皮膚がタイトニングされ、首のたるみや二重あごの改善に寄与します。皮膚表面を傷つけないため、治療直後からメイクが可能で、日常生活への影響が少ない点がメリットです。

スレッドリフトとフィラー注入

物理的にたるみを引き上げたい場合、スレッドリフト(糸リフト)を用います。医療用の溶ける糸を皮下に挿入し、組織を引っ掛けて持ち上げることで広頸筋周辺のたるみを物理的にサポートします。

一方、深い横ジワに対しては、ヒアルロン酸や柔らかい架橋の製剤をシワの溝に注入し、内側から持ち上げる方法がとられます。最近では肌育注射(スキンブースター)のように、皮膚自体の密度を高めて小ジワを目立たなくさせる製剤も人気を集めています。

これらの注入療法は、筋肉への作用というよりは、筋肉の上の皮膚構造を補強する意味合いが強いです。

非侵襲的治療法の比較表

治療法主な対象期待できる効果
ボトックス縦ジワ、フェイスライン筋肉の緊張緩和、リフトアップ
HIFU全体的なたるみ、二重あご皮膚と筋膜の引き締め
ヒアルロン酸深い横ジワシワの溝を埋める、保湿

外科的治療による根本的な解決策

皮膚の余剰が著しい場合や、広頸筋のゆるみが重度で非侵襲的な治療では限界がある場合には、外科手術(切開を伴う治療)が検討されます。

手術は身体への負担やダウンタイムを伴いますが、解剖学的な構造を直接修正するため、変化の度合いや持続期間においては他の治療を凌駕します。

広頸筋そのものを処理する術式は首元の若返りにおいて最終的かつ確実な手段として位置づけられています。ここでは主な外科的手法について触れます。

ネックリフトと広頸筋形成術

ネックリフトは耳の裏側や髪の生え際を切開し、余分な皮膚を切除して引き上げる手術です。多くの場合、単に皮膚を引くだけでなく、「広頸筋形成術(プラティスマプラスティ)」を併用します。

これは、ゆるんで開いてしまった左右の広頸筋を中央で縫い縮めたり(コルセットのように締める)、外側へ引っ張って固定し直したりする処置です。

筋肉の構造自体を若かった頃の位置や張りに戻すため、顎下の角度(cervicomental angle)が鋭角になり、劇的な輪郭の変化が得られます。

脂肪吸引とのコンビネーション

広頸筋の上の皮下脂肪が多い場合、筋肉を引き締めるだけではシャープな首元は完成しません。そのため、顎下や首の脂肪吸引を同時に行うケースが多くあります。

カニューレと呼ばれる細い管で余分な脂肪を除去し、皮膚の厚みを減らした上で、広頸筋を引き締め、最後に皮膚をリドレープ(再配置)します。

脂肪の重みがなくなることで広頸筋への負担も減り、リフトアップ効果が長持ちしやすくなります。重度の二重あごや、脂肪によって首と顔の境目がなくなっている症例に適しています。

ダウンタイムとリスクの理解

外科手術を選択する際は、メリットだけでなくリスクも正しく理解することが大切です。術後は腫れや内出血が生じ、1週間から2週間程度のダウンタイムが必要です。

また、切開を伴うため傷跡が残りますが、通常は耳の裏や顎の下など目立ちにくい場所に作られます。

広頸筋を操作する際、神経への影響など稀な合併症のリスクもゼロではありません。経験豊富な医師による診断と、術後の生活制限(圧迫固定など)を守ることが、美しい仕上がりのために必要となります。

外科手術を検討する際のポイント

  • 重度のたるみや皮膚余りがある
  • 半永久的な効果を望んでいる
  • 1〜2週間の回復期間が確保できる
  • 傷跡のリスクを許容できる
  • 医師と綿密なシミュレーションを行う

よくある質問

首の筋トレをすると逆にシワが増えることはありますか?

間違った方法でトレーニングを行うと、シワを悪化させる可能性があります。

特に「イー」と強く食いしばって首に縦筋を立てるような動作を頻繁に行うと、広頸筋が過度に発達・収縮し、プラティスマバンド(縦ジワ)が定着してしまう恐れがあります。

シワ対策としてのトレーニングは、筋肉を収縮させることよりもストレッチで柔軟性を高めたり、舌の筋肉(舌骨筋群)を鍛えて内側から支えたりする方法が安全で効果的です。

広頸筋のケアは何歳から始めるべきですか?

ケアに「早すぎる」ということはありません。スマートフォンの普及により、20代でも首のシワやたるみに悩む人が増えています。予防の観点から20代のうちから姿勢に気をつけ、顔と同じように首のスキンケアを行うことを強く推奨します。

本格的なエイジングサインが出る前に対策を始めることで、将来的な広頸筋のゆるみや深いシワの発生を大幅に遅らせることができます。

ボトックス注射の効果はどのくらい持続しますか?

個人差はありますが、一般的にボトックスの効果は3ヶ月から6ヶ月程度持続します。注射後数日で効果が現れ始め、2週間程度でピークに達します。その後、徐々に筋肉の動きが戻ってきます。

効果を持続させるためには、定期的な再注入が必要です。また、繰り返し治療を受けることで筋肉が不用意に動くクセが矯正され、効果の持続期間が長くなる傾向もあります。

高い枕を使っていると首のシワができやすいのは本当ですか?

本当です。高い枕を使用すると、寝ている間中首が前屈(顎を引いた状態)し続けることになります。これは数時間にわたって首の皮膚と広頸筋を折り畳んでいるのと同じであり、深い横ジワを作る大きな原因となります。

理想的な枕は仰向けに寝たときに首の骨(頸椎)の自然なカーブを支え、目線が真上よりやや足元側に向く程度の高さです。タオルなどで自分に合った高さに調整することをおすすめします。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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