骨萎縮を補うヒアルロン酸注入|減った骨の体積を補填し土台を復元する治療法

加齢による顔のたるみやシワの根本的な原因は、皮膚の表面的な変化だけではありません。実は、顔の土台である「頭蓋骨」そのものが年齢とともに縮小する「骨萎縮」が大きく関与しています。
本記事では、この骨の減少に着目し、ヒアルロン酸を用いて減ってしまった骨の体積を補い、顔の構造的な土台を復元する治療法について詳しく解説します。
解剖学的な根拠に基づき、自然で立体的な若返りを実現するための理論と実際の方法を、読者の皆様に分かりやすくお届けします。
顔の老化の根本原因である骨萎縮と顔貌変化の関係性
顔の老化現象を正しく理解するためには皮膚のたるみだけに目を向けるのではなく、その深部にある骨格の変化を知ることが重要です。
骨萎縮とは加齢に伴い骨の代謝バランスが変化し、骨量が減少することで頭蓋骨が小さくなる現象を指します。この骨の縮小こそが、顔全体の形状を変化させ、深刻なたるみやシワを引き起こす主要な要因となります。
土台である骨が小さくなれば、その上を覆う皮膚や脂肪組織は行き場を失い、重力に従って垂れ下がるしかありません。
骨代謝の変化と頭蓋骨のボリュームロス
人間の骨は生涯を通じて古い骨を壊す「破骨細胞」と新しい骨を作る「骨芽細胞」の働きにより、常に作り変えられています。しかし、加齢とともにこのバランスが崩れ、骨を壊す働きが骨を作る働きを上回るようになります。
顔面骨においても同様の現象が起こり、頭蓋骨の全体的な体積が減少します。特に閉経後の女性は女性ホルモンの減少により骨密度の低下が加速するため、顔面の骨萎縮も顕著に進行する傾向があります。
頭蓋骨のボリュームロスは顔の皮膚を内側から支えるテントの支柱が短くなるようなものであり、結果としてテントの布である皮膚が余り、たるみとなって現れます。
加齢により骨吸収が進行しやすい特定の部位
顔面骨の中でも、骨吸収(骨が痩せること)が起きやすい部位と、比較的保たれる部位が存在します。特に萎縮が著しいのは、眼球が入っている穴である「眼窩」、鼻の周りの「梨状口」、そして上顎骨と下顎骨です。
眼窩が拡大することで目は窪み、眉骨の下垂を招きます。鼻の穴周辺の骨が痩せると鼻の付け根が低くなり、小鼻が横に広がったような印象を与えます。
また、上顎骨の後退はほうれい線を深くし、下顎骨の萎縮はフェイスラインの乱れや顎(オトガイ)の形状変化に直結します。
これらの部位特異的な骨の変化が、老け顔の特徴的なサインを作り出します。
骨格の変化が招く軟部組織の下垂と変形
骨格が縮小すると、骨と皮膚をつなぎ止めている「リガメント(靭帯)」の付着部も位置を変えたり、緩んだりします。
リガメントは顔の組織をあるべき場所に固定する役割を担っていますが、土台である骨が後退することでその張力が失われ、脂肪や皮膚を支えきれなくなります。
これにより、頬の脂肪は下方に移動し、ゴルゴラインやマリオネットラインといった深い溝を形成します。
つまり、表面に見えるシワやたるみは皮膚そのものの老化以上に、深部構造である骨の萎縮とそれに伴う支持組織の崩壊が大きな原因となっているのです。
加齢による骨格の変化と影響
| 部位 | 骨の変化 | 顔貌への影響 |
|---|---|---|
| 眼窩(目の周り) | 骨吸収により穴が外側・下側に広がる | 目が窪む、目尻が下がる、クマが目立つ |
| 上顎骨(中顔面) | 全体的に後退し、厚みが減少する | 頬が平坦になる、ほうれい線が深くなる |
| 下顎骨(フェイスライン) | 骨体積が減り、エラや顎先が小さくなる | 輪郭がぼやける、顎下のたるみ、マリオネットライン |
土台復元治療としてのヒアルロン酸注入の基本概念
骨萎縮に対するヒアルロン酸注入は、単にシワを埋める従来の手法とは一線を画します。この治療の核心は、失われた骨の体積をヒアルロン酸で「置き換える」ことにあります。
骨膜上という深い層に硬めのヒアルロン酸を注入することで萎縮した骨格を擬似的に増大させ、顔の構造的な支持力を取り戻すことが可能になります。
これは、マイナスになった要素をゼロに戻す、あるいはプラスに転じさせるための「補填」作業であり、顔の造形を根本から整える建築的なアプローチといえます。
骨膜上への深部注入によるリフトアップ原理
皮膚の浅い層ではなく、骨の直上である「骨膜上」にヒアルロン酸を注入することが土台復元の鍵となります。骨膜上に注入されたヒアルロン酸は、あたかも新しい骨が形成されたかのような役割を果たします。
これにより、内側から皮膚や皮下組織をしっかりと持ち上げ、テントの支柱を立て直すようなリフトアップ効果を発揮します。
深部に土台を作ることで、表面の皮膚が自然に張りを取り戻し、不自然な膨らみを作ることなく、シャープで若々しい輪郭を形成することができます。
シワ治療とボリューム増大治療の決定的な違い
一般的なシワ治療では、真皮層や皮下組織の浅い部分に柔らかいヒアルロン酸を注入し、溝を埋めることが目的です。しかし、骨萎縮を補う治療では、目的は「形状の維持と再構築」にあります。
シワの真下だけを埋めるのではなく、顔全体のバランスを見て、凹んでしまった部分や支えが必要なポイントに構造的なボリュームを足します。
シワを消すことは結果として得られる効果の一つであり、主たる目的は若かりし頃の顔の重心位置や立体感を再現することにあります。
この視点の違いが、仕上がりの自然さと美しさを左右します。
解剖学的構造に基づいた注入ポイントの選定
効果的かつ安全に土台を復元するためには、解剖学的な知識に基づいた正確な注入ポイントの選定が必要です。
MDコード(MeDical Codes)などの注入指針を参考に、血管や神経の走行を熟知した上で、リガメントの付着部や骨の欠損が著しい部位を狙います。
例えば、頬骨の弓部やこめかみ、顎のラインなど、顔の枠組みを決定づけるポイントに的確に注入することで、少量のヒアルロン酸でも最大限のリフトアップ効果を引き出します。
無闇に量を増やすのではなく、効かせるべき「要所」を見極めることが、美しい土台作りの条件です。
土台復元注入のメリット
- 骨格レベルからの構造的な若返り
- 皮膚表面の凸凹感が出にくい
- 立体的でメリハリのある顔立ちの形成
- リガメントの補強による長期的な予防効果
使用するヒアルロン酸製剤の物理的特性と要件
骨の代わりとして機能させるためには、使用するヒアルロン酸製剤にも特定の物理的特性が求められます。柔らかく流動性の高い製剤では骨のような硬い支持組織の役割を果たすことはできません。
土台形成には、弾力性(G Prime)が高く、外力に対して変形しにくい、そして組織を持ち上げる力(リフティング力)の強い製剤を選ぶことが重要です。
適切な製剤選びは、治療の効果を持続させ、注入後の移動や変形を防ぐために不可欠な要素です。
高い弾性と凝集性がもたらす造形力
骨萎縮を補うためには、硬さを示す「弾性」と、製剤がバラバラにならずにまとまる力である「凝集性」の両方が高いレベルで必要です。弾性が高い製剤は周囲の組織からの圧力に抵抗し、注入した形状をしっかりと維持します。
これにより、シャープな顎先や高い頬骨といった骨格的なラインを明瞭に描き出すことができます。
また、適度な凝集性は製剤が周囲に広がってぼやけてしまうのを防ぎ、狙った場所に留まって土台としての機能を果たし続けるために重要です。
長期間の持続性と生体内での安定性
骨膜上に注入するヒアルロン酸は頻繁に追加注入を行うものではないため、比較的長い持続期間を持つことが望ましいです。
高品質な製剤は体内の酵素による分解を受けにくく加工されており、1年半から2年、あるいはそれ以上の期間にわたって効果を持続するものもあります。
また、時間が経過しても水分を過剰に吸収して膨張したりせず、注入直後の形状を安定して保つ性質も重要です。
安定性が高い製剤を選ぶことで自然な顔貌を長く維持でき、メンテナンスの負担も軽減されます。
組織との親和性と安全性の確保
異物であるヒアルロン酸を体内に長期間留置する以上、組織との親和性が高く、アレルギー反応や炎症を起こしにくい安全な製剤であることが大前提です。
現在主流となっている製剤は非動物性由来であり、不純物を極限まで取り除くことで高い安全性を確保しています。
また、万が一トラブルが起きた際や、修正が必要になった際に、ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ)によって容易に分解できる可逆性を持っていることも、この治療法の大きな利点であり、安全性を担保する重要な要素です。
製剤タイプ別の適応部位
| 製剤の特性 | 主な適応部位 | 期待される役割 |
|---|---|---|
| 高弾性・高凝集性(硬め) | 顎、こめかみ、頬骨上 | 骨の代用、輪郭形成、強力なリフトアップ |
| 中程度の弾性(やや硬め) | 額、ほうれい線の基部 | ボリューム補填、深いシワの持ち上げ |
| 低弾性・高流動性(柔らかめ) | 唇、涙袋、浅いシワ | ※骨萎縮の補填には使用しません |
顔面領域ごとの詳細な注入アプローチと効果
顔は複数の骨パーツが組み合わさって構成されており、部位によって骨萎縮の進行度合いや形状変化の特徴が異なります。そのため、一律に注入するのではなく、各エリアの解剖学的特徴に合わせた繊細なアプローチが必要です。
ここでは、上顔面、中顔面、下顔面のそれぞれの領域において、具体的にどの骨の萎縮を補い、どのような美的改善を目指すのかを解説します。
それぞれのパーツが正しい位置とボリュームを取り戻すことで、顔全体のハーモニーが整います。
上顔面:こめかみと額の骨痩せへの対応
こめかみ(側頭部)の骨と筋肉が痩せると、顔の上半分の輪郭が瓢箪(ひょうたん)のように凹み、老けた印象や疲れた印象を与えます。また、眉骨の上縁が後退することで、まぶたの重みが増すこともあります。
このエリアでは側頭窩の深部にヒアルロン酸を注入し、凹みを滑らかに整えることで、卵形の若々しい輪郭を復元します。
額に関しては、平坦化した前頭骨に適度な丸みを与えることで女性らしい立体感を出しつつ、眉毛を持ち上げる効果も期待でき、目が開きやすくなるという機能的なメリットも生まれます。
中顔面:頬骨と眼窩周囲の立体感回復
中顔面は加齢変化が最も顕著に現れる部位です。上顎骨の萎縮と眼窩の拡大により、目の下が窪み、頬の頂点が下がります。この変化は、ゴルゴラインの出現やほうれい線の悪化に直結します。
治療では頬骨の弓部や前面の骨膜上に注入を行い、頬の高さを元の位置に戻します。これにより、目の下のクマが改善されるだけでなく、テントを張り直す効果でほうれい線にかかる皮膚の重みが軽減されます。
中顔面のボリューム回復は、顔全体をリフトアップして見せるための要となる重要な工程です。
下顔面:下顎骨とオトガイの形成による輪郭矯正
下顎骨は年齢とともに体積が減少し、骨の角(エラ)の位置が曖昧になり、顎先(オトガイ)が小さく後退します。これにより、フェイスラインの皮膚が余り、首との境界が不明瞭になります。
下顔面の治療では、下顎角からオトガイにかけての骨のラインを再構築するように注入を行います。
顎先に高さを出し、フェイスラインを直線的に整えることで余った皮膚を前方に引っ張り出し、二重顎やマリオネットラインを目立たなくさせる効果があります。
シャープな下顔面は、洗練された印象を与える決定的な要素です。
注入部位と視覚的変化
| ターゲット領域 | 補填する骨格 | 視覚的な若返り効果 |
|---|---|---|
| テンプル(こめかみ) | 側頭骨の凹み | 目元がパッチリする、輪郭が滑らかになる |
| チーク(頬) | 頬骨・上顎骨 | 頬の位置が上がる、ほうれい線が浅くなる |
| ジョーライン(顎) | 下顎骨・オトガイ | 横顔が整う、マリオネットラインの改善 |
単なる充填を超えたリガメント補強と予防効果
骨萎縮を補うヒアルロン酸注入の真価は現在の見た目を改善するだけでなく、将来的な老化の進行を緩やかにする「予防的効果」にもあります。
骨と皮膚をつなぐ強力な接着組織である真性リガメントの根元(骨付着部)にヒアルロン酸を配置することは、緩んだリガメントを再び張り詰めさせる補強工事のような意味を持ちます。
この「リガメント強化」により、組織の下垂に対する抵抗力が高まり、老化のドミノ倒しを食い止めることが可能になります。
真性リガメントの基部への注入とその作用
顔には骨から皮膚へ直接つながる「真性リガメント」が数カ所存在し、これらが顔のたるみを食い止める杭の役割を果たしています。しかし、土台の骨が萎縮すると杭が浮いてしまい、支える力が弱まります。
ヒアルロン酸をリガメントの根元である骨膜上に正確に注入することでリガメントを根元から持ち上げ、再びピンと張った状態に戻します。
これにより、リガメントが支えている皮膚や脂肪組織が元の位置に引き上げられ、自然なリフトアップ効果が生まれると同時に、組織のズレ落ちを物理的に防ぐことができます。
筋肉の動きの調整と表情ジワへの波及効果
骨萎縮の補正は、顔の表情筋の働きにも良い影響を与えます。骨が小さくなると、その上に付着している筋肉が緩み、収縮効率が悪くなることがあります。
これを補うために筋肉が必要以上に強く収縮しようとし、それが深い表情ジワの原因となることがあります。
骨膜上の適切な位置にボリュームを補填することで、筋肉の走行や張力が適正化され、過剰な筋収縮が緩和される効果が期待できます。
結果として、ボトックス治療などを併用せずとも、表情ジワが刻まれにくい環境を整えることに寄与します。
老化の進行速度を緩やかにするアンチエイジング効果
定期的に骨萎縮を補正し、土台を安定させておくことは、長期的なアンチエイジング戦略として極めて有効です。皮膚が大きくたるんでしまってからでは、外科的な手術で余剰皮膚を切除しなければ改善が難しい場合があります。
しかし、骨萎縮が進行する過程で適宜ボリュームを補填し、皮膚が伸びてしまうのを未然に防いでおけば、5年後、10年後の顔の状態に大きな差が生まれます。
骨格のサポートを維持することは皮膚にかかる負担を減らし、若々しい肌質と形状を長く保つための賢明な投資といえます。
期待できる副次的効果
- リガメントの再緊張による組織の安定化
- 過剰な表情筋収縮の緩和
- 皮膚の伸展防止によるたるみ予防
- 心理的な自信の回復とQOLの向上
治療に伴うリスク管理と安全への配慮
いかに優れた治療法であっても、医療行為である以上リスクはゼロではありません。特に骨膜上という深部への注入や、血管が豊富な顔面への施術には、高度な技術と細心の注意が必要です。
患者様自身も起こりうるリスクや合併症について正しく理解し、それらを回避するための対策を講じているクリニックを選ぶことが大切です。
安全第一の治療を行うために、解剖学の熟知とトラブル時の迅速な対応体制が整っていることは、医師選びの絶対条件となります。
血管閉塞のリスクとその回避策
ヒアルロン酸注入における最も重大な合併症は誤って血管内に製剤を注入してしまう、あるいは血管を圧迫してしまうことによる「血管閉塞」です。
これにより血流が遮断されると、皮膚の壊死や、稀ではありますが失明といった重篤な障害を引き起こす可能性があります。
このリスクを最小限にするためには血管の走行を避けた安全な注入ポイントを選ぶことはもちろん、先端が丸くなっているカニューレ(鈍針)を使用する、注入前に吸引確認を行うなどの手技的な対策が徹底されていなければなりません。
過剰注入による不自然な顔貌(オーバーフィル)の防止
骨萎縮を補いたい一心で、必要以上の量を注入してしまうと、顔がパンパンに膨れ上がったり、表情が乏しくなったりする「オーバーフィル症候群」に陥る危険があります。いわゆる「ヒアル顔」と呼ばれる状態です。
これを防ぐためには、一度に完全に仕上げようとせず、数回に分けて少しずつ調整する段階的なアプローチが有効です。
また、医師が客観的な美的センスを持ち、患者様の「もっと入れたい」という要望に対して、全体のバランスを考慮して適切に止める勇気を持つことも重要です。
医師の解剖学的知識と技術力の重要性
骨膜上注入は、皮膚の下で見えない部分に対する操作であるため、医師の解剖学的知識の深さが結果を左右します。神経や血管がどの深さを、どのように走行しているかを3次元的にイメージできる能力が必要です。
また、製剤を骨膜上に正確に留置するためには、針先が骨に当たった感触を指先で感じ取る繊細な技術も求められます。
経験豊富な医師は個々の患者様の骨格の左右差や微細な特徴を見極め、トラブルを未然に防ぎながら最大の効果を引き出す注入計画を立てることができます。
リスク要因と対策
| リスク内容 | 主な原因 | 具体的な対策・対応 |
|---|---|---|
| 血管閉塞・血流障害 | 血管内注入・圧迫 | カニューレの使用、解剖の熟知、溶解剤の常備 |
| 感染症 | 不潔な操作 | 完全滅菌された器具の使用、施術部位の消毒徹底 |
| しこり・凹凸 | 浅すぎる層への注入 | 適切な層への注入、マッサージによるなじませ |
治療適応の見極めと他の治療法との境界線
骨萎縮を補うヒアルロン酸注入は多くの人にとって有効な手段ですが、全てのお悩みに対して万能ではありません。現在の顔の状態や、目指すゴールによっては、他の治療法が適している場合や、併用が必要な場合があります。
適切な治療計画を立てるためには、ヒアルロン酸で「できること」と「できないこと」を明確にし、自身の状態がこの治療の適応範囲内であるかを冷静に判断する必要があります。
ここでは、どのようなケースがこの治療に適しているか、また限界はどこにあるかを解説します。
骨萎縮治療が適している理想的な候補者
この治療が最も効果を発揮するのは、皮膚のたるみが軽度から中等度で、顔のボリューム減少が目立ち始めた30代後半から50代の方々です。
「最近顔が疲れて見える」「昔に比べて顔が四角くなってきた」「痩せたわけではないのに頬がコケた」と感じている方は、骨萎縮の補正によって劇的な若返り効果を得られる可能性が高いです。
また、手術には抵抗があるものの、即効性のある変化を求めている方にとっても、ダウンタイムが少なく自然な変化が得られる本治療は非常に適した選択肢となります。
外科的手術やスレッドリフトとの比較と使い分け
皮膚の余りが著しく多い場合や、重度のたるみがある場合は、ヒアルロン酸によるボリューム補充だけでは改善に限界があります。
過剰に皮膚が伸びてしまっている状態で無理に膨らませようとすると、顔が大きくなってしまうリスクがあります。
このような場合は余分な皮膚を切除するフェイスリフト手術や、糸で直接組織を引き上げるスレッドリフトの方が適している、あるいはそれらとの併用が望ましいでしょう。
ヒアルロン酸は「足し算」の治療であるため、引き上げや引き締めといった物理的な移動を主目的とする治療とは役割が異なります。
年齢や肌質による効果の現れ方の違い
年齢層によってもアプローチは異なります。若い世代では先天的な骨格形成不全(顎が小さい、額が平らなど)の修正として行われることが多く、美容的なバランス調整の意味合いが強くなります。
一方、高齢の方では骨だけでなく筋肉や脂肪の萎縮も進行しているため、使用するヒアルロン酸の量が多くなる傾向にあります。
また、皮膚が極端に薄い方は、注入した製剤の輪郭が見えやすいため、より慎重な製剤選びと層の選定が必要です。肌の弾力性や厚みを考慮した上で、無理のない範囲で治療を行うことが大切です。
よくある質問
- 骨の上に注射をするのは強い痛みを伴いますか?
-
骨膜上への注入と聞くと激痛を想像されるかもしれませんが、実際にはそこまで強い痛みではありません。針を刺す瞬間のチクリとした痛みと、製剤が入ってくる際の圧迫感を感じる程度です。
多くのヒアルロン酸製剤には麻酔成分(リドカイン)が含まれているため、注入が進むにつれて感覚が鈍くなり、痛みは緩和されます。
また、痛みに敏感な方にはクリーム麻酔や冷却、極細の針の使用などで痛みを最小限に抑える工夫を行っています。
- 治療後の腫れや内出血などのダウンタイムはどのくらいですか?
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骨膜上注入は深い層へのアプローチであるため、表面的な注入に比べて内出血のリスクは比較的低い傾向にあります。
腫れに関しては個人差がありますが、数日から1週間程度で落ち着くことがほとんどです。特に目元や口元は腫れやすい部位ですが、メイクで隠せる程度の場合が多いです。
大事な予定がある場合は、念のため施術から2週間ほど余裕を持ったスケジュールで予約を入れることをお勧めします。
- 一度注入した骨の土台はどのくらいの頻度でメンテナンスが必要ですか?
-
使用する製剤の種類や個人の代謝によって異なりますが、骨形成目的で使用される硬めのヒアルロン酸は、一般的に1年半から2年程度持続します。
ただし、効果がいきなりゼロになるわけではなく、徐々に吸収されていきます。
完全に無くなってから次を入れるのではなく、気になり始めた段階や、1年に1回程度のペースで少量タッチアップ(追加修正)することで常に良い状態をキープでき、トータルの注入量やコストを抑えることができます。
- 仕上がりが気に入らなかった場合、元に戻すことはできますか?
-
はい、可能です。ヒアルロン酸の最大の利点の一つは、可逆性があることです。
万が一、仕上がりの形状が希望と異なったり、左右差が気になったりした場合は、「ヒアルロニダーゼ」という分解酵素を注入することで、数時間から数日のうちにヒアルロン酸を水と二酸化炭素に分解し、吸収させることができます。
これにより、元の状態に戻すことができるため、安心して治療を受けていただけます。
- 骨にヒアルロン酸を入れることで、骨自体に悪影響はありませんか?
-
現在のところ、適切な手技で骨膜上にヒアルロン酸を注入することによる、骨への直接的な悪影響(骨が溶けるなど)は報告されていません。
むしろ、骨膜上に適切な圧力がかかることで骨芽細胞が刺激される可能性を示唆する説もありますが、臨床的に確立されたものではありません。
ヒアルロン酸自体は生体適合性が高いため、骨や周囲の組織に対して安全に馴染みます。
ただし、不適切な位置への大量注入は避けるべきであり、解剖学に精通した医師による施術が重要です。
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