口輪筋(こうりんきん)の菲薄化と口元のシワ|唇が痩せて人中が長く見える理由

口輪筋(こうりんきん)の菲薄化と口元のシワ|唇が痩せて人中が長く見える理由

ふと鏡を見たときに「以前より鼻の下が長くなった」「唇が薄くなり、口周りに細かいシワが増えた」と感じることはありませんか。

これらの変化は単なる皮膚の乾燥ではなく、口元を支える土台である「口輪筋」が薄く弱くなる現象、すなわち菲薄化(ひはくか)が深く関係しています。筋肉の厚みが失われることで皮膚が余り、支えを失った唇が内側へ巻き込まれることで人中が間延びして見えるのです。

本記事では口輪筋の菲薄化が起きる原因から、それがもたらす外見上の変化、そして日常生活で意識すべき対策までを詳しく解説し、若々しい口元を取り戻すための知識を提供します。

目次

口輪筋の菲薄化とは何か:構造的変化とエイジングの関連性

口輪筋の菲薄化とは、加齢や外部要因によって口の周りを囲む円状の筋肉の繊維が細くなり、全体の厚みと弾力が失われる状態を指し、これが口元の老化印象を決定づける最大の要因となります。

私たちの顔には多くの表情筋が存在しますが、その中でも口輪筋は特殊な役割を担っています。骨に付着している他の筋肉とは異なり、口輪筋は皮膚や他の筋肉と複雑に絡み合いながら唇の動きを制御し、口元の形状を維持する「コルセット」のような働きをしています。

若い頃の口輪筋は太く密度の高い繊維で構成されており、これが唇をふっくらと前方に押し出し、口周りの皮膚を内側からパンと張った状態で支えています。

しかし、年齢を重ねるにつれて筋肉を使用する頻度や強度が低下したり、ホルモンバランスの変化が起きたりすると筋肉の繊維自体が萎縮し、ボリュームが減少します。

筋肉の厚み減少が皮膚に与える物理的影響

筋肉の厚みが減少すると、その上を覆っている皮膚との間に隙間が生じやすくなります。風船の空気が抜けると表面のゴムがシワシワになるのと同様に中身である筋肉が痩せると、表面の皮膚は余ってしまいます。

この「余った皮膚」が、重力に従って垂れ下がり、あるいは表情の動きに合わせて折り畳まれることで深いシワや細かいちりめんジワとして現れます。

特に口元は会話や食事で頻繁に動くため、筋肉のボリュームダウンによる皮膚の折り畳みが繰り返され、シワが定着しやすい部位といえます。

加齢だけではない菲薄化の進行要因

菲薄化は加齢のみが原因ではありません。現代特有の生活習慣も大きく影響します。マスク生活が長引き、口元を大きく動かして話す機会が減ったことや、スマートフォンの長時間使用による無表情な時間の増加は口輪筋の活動量を低下させます。

筋肉は使わなければ衰えるという性質を持つため、若年層であっても口輪筋の菲薄化が進行しているケースが見受けられます。

また、過度なダイエットによる急激な体重減少も、脂肪だけでなく筋肉の分解を招き、口元の貧相さを加速させる要因となります。

健康な口輪筋と菲薄化した口輪筋の違い

健康な状態の口輪筋と菲薄化が進行した口輪筋では、見た目や機能に明確な差が生じます。どのような違いがあるのかを整理して理解することは、自身の状態を把握する第一歩となります。

筋肉の状態による口元の特徴比較

比較項目健康な口輪筋の状態菲薄化した口輪筋の状態
唇の形状厚みがあり、Cカールのように外側にめくれている薄く平坦になり、内側に巻き込まれている
人中(鼻の下)短く、立体的な溝(人中稜)がはっきりしている長く間延びし、溝が浅く平坦に見える
口角の位置自然に上がっており、真顔でも不機嫌に見えない重力に負けて下がり、への字口になりやすい
皮膚の質感内側からのハリがあり、縦ジワが目立たない細かい縦ジワが多数入り、梅干しのような質感

唇が痩せて人中が長く見える視覚的・解剖学的理由

唇が痩せて人中が長く見えるのは口輪筋の衰えによって唇の赤唇部(赤い部分)が内側に巻き込まれ、鼻の下から上唇の境界線までの物理的な露出面積が増大するからです。

若々しい口元において、上唇は鼻の下から滑らかなカーブを描いて外側に反り返っています。これを「Cカール」と呼びますが、この形状を維持しているのが口輪筋の張力です。

筋肉が十分に発達していると、唇の縁(バーミリオンボーダー)がくっきりと隆起し、上唇が上向きに持ち上げられています。

しかし、口輪筋が菲薄化するとこの持ち上げる力が弱まり、さらに唇自体の脂肪やコラーゲンも減少するため、唇のボリュームが保てなくなります。結果として、上唇の赤い部分が口の中へと巻き込まれるように後退してしまうのです。

赤唇部の消失と皮膚の伸展

上唇の赤い部分が見えにくくなると、顔の正面から見たときに鼻の付け根から上唇の端までの距離(人中)が相対的に長く見えます。これは「目の錯覚」だけでなく、実際に皮膚が伸びている現象も含まれます。

口輪筋が緩むと鼻の下の皮膚を支える力が弱まり、重力によって皮膚全体が下方へと引き伸ばされます。これにより、人中の溝(人中稜)も平坦になり、のっぺりとした印象を与えるようになります。

かつては引き締まっていた鼻の下のエリアが、間延びした長方形のように見えてしまうのはこのためです。

顔の下半分のバランス崩壊

人中が長く見えることは顔全体の重心を下げ、老けた印象を強力に与えます。

一般的に鼻の下から上唇までの長さと、下唇から顎先までの長さの比率は1:2が黄金比とされていますが、人中が伸びるとこのバランスが1:1に近づき、あるいは逆転して見えることさえあります。

顔の下半分が長く見える現象は「面長化」とも呼ばれ、若々しい「逆三角形」の輪郭から、加齢を感じさせる「四角形」や「台形」の輪郭へと変化させる要因となります。

加齢による唇の変化パターン

唇の変化は一朝一夕に起こるものではなく、段階を経て進行します。ご自身や周囲の方の口元を観察する際、以下のような変化が現れていないかを確認することが重要です。

進行度別の唇と人中の変化

  • 初期段階: 口紅を塗る際、以前よりも上唇の輪郭がぼやけて描きにくいと感じるように。真顔の時に口角が以前より下がっていることに気づく。
  • 中期段階: 上唇の厚みが明らかに減り、鼻の下が少し伸びたような違和感を覚える。笑ったときに歯茎が見えにくくなる、あるいは逆に見えすぎるなど表情の作り方に変化が生じる。
  • 後期段階: 上唇が極端に薄くなり、直線のようになる。口を閉じていても鼻の下に縦方向の細かいシワが走り、人中が平らで長くなる。口元の緊張感が完全になくなり、締まりのない印象に。

口輪筋の衰えが引き起こす具体的なシワの種類

口輪筋の衰えは、単に肌の表面に線が入るだけでなく、筋肉の動きや皮膚の余り方によって「梅干しジワ」「マリオネットライン」「口周りの放射状ジワ」という特徴的な3種類のシワを形成します。

シワというと皮膚の乾燥ばかりに目が向きがちですが、口元のシワに関しては、その深層にある筋肉の形状変化がダイレクトに反映されます。

口輪筋は皮膚と密接に結合しているため、筋肉が緩めば皮膚も緩み、筋肉が縮こまれば皮膚も折り畳まれます。特に口周りは食事や会話で一日中動き続けるため、筋肉の衰えによる皮膚のヨレが形状記憶されやすい場所です。

それぞれのシワがなぜできるのか、その成り立ちを知ることで、適切な対処法が見えてきます。

上唇の縦ジワ(スモーカーズライン)

上唇の縁から鼻の下に向かって垂直に入る細かいシワは、別名「スモーカーズライン」とも呼ばれます。これは口をすぼめる動作(「う」の口をする、ストローで吸う、喫煙するなど)を繰り返すことによって生じます。

若く弾力のある口輪筋であれば、すぼめた後にすぐ元の平らな状態に戻りますが、菲薄化した筋肉と弾力を失った皮膚では、折り目が戻らずに刻み込まれてしまいます。

口紅がこの縦ジワに滲んで入り込む「リップブリード」という現象も、このシワが原因で起こります。

顎に伸びるマリオネットライン

口角から顎に向かって伸びる深い溝、マリオネットラインは口輪筋の支持力が低下し、頬の脂肪や皮膚の重みを支えきれなくなることで発生します。

口輪筋は頬の筋肉(大頬骨筋など)とも繋がっていますが、口輪筋自体が弱くなると頬の重みに負けて口角周辺の皮膚が下垂します。これが口元の横に影を作り、腹話術の人形のようなラインを形成します。

これは単なるシワではなく「たるみ」の一種であり、筋肉の衰えが顕著に現れるサインです。

顎の梅干しジワとオトガイ筋の関係

口輪筋が弱まると口を閉じる力が不足します。その不足分を補おうとして、下顎にある「オトガイ筋」という別の筋肉が過剰に働くようになります。

口をギュッと閉じたときに顎の先にボコボコとした凹凸ができるのが「梅干しジワ」です。本来、口を閉じるのは口輪筋の役割ですが、代償動作としてオトガイ筋が緊張し続けることで、顎の皮膚が引きつり、独特のシワや凹凸が定着してしまいます。

シワの種類とその発生要因

シワの名称主な発生場所筋肉と皮膚の状態
放射状縦ジワ唇の周囲(特に上唇)口輪筋のボリューム減少により、皮膚が余って折り畳まれる。口をすぼめる動作の形状記憶
マリオネットライン口角から顎下口輪筋が頬の脂肪を支えきれず、ジョールファット(口元の脂肪)が下垂して段差ができる
梅干しジワ顎の先端(オトガイ)口輪筋の筋力不足を補うため、オトガイ筋が過剰に収縮し、皮膚が引きつれる
口角の下がりジワ口角のすぐ横口角挙筋や口輪筋の衰えにより、口角を引き上げる力が弱まり、皮膚が被さるように垂れる。

日常生活に潜む口輪筋菲薄化の加速要因

口輪筋の菲薄化を加速させる要因は加齢という不可抗力だけでなく、無意識に行っている日々の癖や環境的要因が複合的に絡み合って進行します。

「年齢のせいだから仕方がない」と諦める前に生活習慣を見直すことが重要です。筋肉は使わなければ衰えますが、逆に過度な負担や誤った使い方も劣化を招きます。

また、筋肉そのものだけでなく、筋肉を養う血管や筋肉を覆う皮膚環境へのダメージも間接的に菲薄化を助長します。ここでは、日常生活の中で知らず知らずのうちに口元を老けさせている原因を掘り下げます。

紫外線による光老化の影響

紫外線、特にUV-A波は真皮層の奥深くまで到達し、コラーゲンやエラスチンといった弾力繊維を変性させます。皮膚の弾力が失われると内部の筋肉を支える力が弱まり、筋肉自体も萎縮しやすくなります。

唇はメラニン色素が少なく、角層も薄いため、顔の他の部位よりも紫外線のダメージをダイレクトに受けやすい場所です。長年の無防備な日焼けは唇の乾燥だけでなく、深部の組織劣化を招き、口輪筋の菲薄化を後押しします。

エストロゲンの減少と骨密度の低下

女性ホルモンであるエストロゲンはコラーゲンの生成を促し、肌や筋肉のハリを保つ働きがあります。更年期以降、エストロゲンが急激に減少すると、全身の筋肉量とともに口輪筋も痩せていきます。

さらに深刻なのが「頭蓋骨の萎縮」です。顔の骨、特に下顎の骨や歯槽骨(歯を支える骨)は加齢とともに痩せて小さくなります。

土台である骨が小さくなると、その上に乗っている筋肉や皮膚は余ってしまい、結果としてたるみやシワが加速します。

悪習慣による筋肉への負担

口呼吸や食事の際にあまり噛まない習慣は、口輪筋を使う機会を奪います。一方で、歯ぎしりや食いしばりは口周りの筋肉(咬筋など)に過度な緊張を与え、血流を悪化させることで口輪筋の健全な代謝を阻害します。

また、喫煙習慣は血管を収縮させ、筋肉への酸素や栄養の供給を滞らせるだけでなく、活性酸素を発生させて組織の老化を早める最大のリスク要因です。

主な菲薄化要因と対策の方向性

カテゴリー具体的な要因口元への悪影響
環境要因紫外線(UV-A)真皮構造の破壊により筋肉を支える結合組織が劣化し、ハリが失われる
ホルモン・骨格エストロゲン低下・骨萎縮筋肉量の減少に加え、土台となる歯槽骨や顎の骨が痩せることで組織全体が下垂する
生活習慣口呼吸・無表情口輪筋の活動量が低下し、廃用性萎縮(使わないことによる筋肉の痩せ)が進行する
物理的ストレス喫煙・過度な摩擦血流障害による栄養不足や、活性酸素による細胞ダメージが筋肉の質を低下させる

あなたの口輪筋は大丈夫?簡単セルフチェック

自分の口輪筋がどの程度衰えているのか、あるいは菲薄化のリスクがあるのかを知るために、特別な器具を使わずに自宅でできる簡単なチェック方法があります。

鏡を見ただけでは気づきにくい筋肉の内部的な衰えも動作確認を行うことで把握できます。早期に気づくことができれば、それだけ対策も早く講じることができ、深刻なシワや人中の伸びを予防することに繋がります。

以下のチェック項目を試し、現状の口元の筋力を客観的に評価してください。判定結果が悪くても、筋肉は何歳からでも鍛え直すことが可能ですので、現状を知ることを恐れずに確認します。

ペットボトルやペンを使った筋力テスト

口輪筋の「閉じる力」と「持久力」を測るテストが有効です。空の500mlペットボトルを唇だけでくわえ(歯を使わない)、持ち上げることができるか試してください。

もし持ち上げられない、あるいは数秒で落としてしまう場合は口輪筋がかなり弱まっている可能性があります。

また、割り箸やペンを唇だけで水平にくわえ、口角が下がらずにキープできるかも指標になります。これらが辛いと感じる場合、筋肉の菲薄化が始まっていると考えられます。

「う」「い」の発音時の形状チェック

鏡の前で「う」と口を尖らせたとき、唇の周りに細かい放射状のシワが多数寄る場合は皮膚の弾力低下と筋肉の菲薄化が進行しています。

また、「い」と口を横に引いたとき、首筋に筋が浮き出たり、顎に梅干しのようなボコボコができたりする場合、口輪筋ではなく首や顎の筋肉を使って無理に動かしている証拠です。本来使うべき口輪筋が正しく機能していないサインといえます。

口輪筋の衰えチェックリスト

  • 無意識の口開き: テレビを見ている時やスマートフォンを操作している時、気づくと口が半開きになっていることがある
  • 食事中のトラブル: 食事中に食べ物をこぼしやすくなったり、固いものが噛みにくくなったり、お茶を飲むときにむせやすくなった
  • 口紅の不具合: 口紅を塗ってもすぐに輪郭が滲んだり、歯に口紅がついてしまうことが増えた
  • 発音の不明瞭さ: 「パ・ピ・プ・ペ・ポ」や「マ・ミ・ム・メ・モ」などの唇を使う音が発音しにくく、滑舌が悪くなったと言われる
  • 水分保持力の低下: 口をゆすぐ時、水が口の端から漏れてしまうことがある

唇の痩せと人中短縮を目指す毎日のケアとトレーニング

口輪筋の菲薄化を食い止め、再びふっくらとした唇と引き締まった人中を取り戻すためには毎日の継続的なトレーニングと適切な保湿ケアが重要であり、これらを習慣化することで確実な変化が期待できます。

顔の筋肉は体の筋肉に比べて小さく薄いため、過度な負荷をかけるトレーニングは逆効果になることもありますが、適度な刺激を毎日与えることで反応しやすいという特徴もあります。

ここでは、シワを深くせずに筋肉を強化する安全なトレーニング法と、皮膚の柔軟性を保つケアについて解説します。高価な美顔器に頼らずとも、自分の意識と手だけでできるケアは多く存在します。

割り箸を使った口角トレーニング

割り箸を一本用意し、前歯ではなく「唇」で挟みます。この状態で口角を割り箸のラインよりも上に持ち上げるように意識して「いー」の口を作ります。

このトレーニングは、口輪筋だけでなく、口角を引き上げる頬の筋肉(大頬骨筋)も同時に刺激できるため、人中の短縮効果とリフトアップ効果が狙えます。

1日30秒〜1分程度、鏡を見ながらシワが寄らないように行うことがポイントです。

「唇プレス」と「風船膨らまし」

上下の唇を口の内側に強く巻き込み、上下の唇同士を押し付け合います(「ん」の口)。この状態で5秒キープし、その後「パッ」と勢いよく開放します。これを繰り返すことで口輪筋のポンプ作用を促し、血流を改善します。

また、片方の頬に空気を溜めて膨らませ、その空気を口の中で移動させる運動も内側から口輪筋を引き伸ばし、硬くなった筋肉をほぐすストレッチ効果があります。

保湿とUVケアの徹底

トレーニングと並行して絶対に必要なのが保湿です。乾燥した硬い皮膚のままトレーニングを行うと折り紙を折るようにシワが深く刻まれてしまいます。

リップクリームやワセリン、レチノール(ビタミンA)配合のクリームなどを口周りにたっぷりと塗布し、皮膚を柔軟にしてから動かすようにします。

また、外出時は唇にも使えるUVカットリップを使用し、紫外線によるコラーゲン破壊を防ぐことが、筋肉の上の皮膚を守るために重要です。

効果的なセルフケアの手順

ケアの順序内容目的とポイント
1. 準備(保湿)高保湿クリームやオイルを口周りに塗布摩擦を防ぎ、皮膚を柔らかくすることでトレーニングによるシワ定着を防ぐ
2. ほぐす(マッサージ)人差し指で口周りを優しく円を描くようにマッサージ凝り固まった口輪筋をほぐし、血流を促進させてトレーニング効果を高める
3. 鍛える(トレーニング)「う・い」体操や割り箸トレーニング意識的に口輪筋を動かし、筋肉の繊維を太くして厚みを取り戻す。過度な回数は避ける
4. 鎮静(リラックス)口から息を吐きながら唇をブルブル震わせる使った筋肉の緊張を解き、疲労物質を流してリラックスさせる

美容医療でアプローチする菲薄化対策の選択肢

セルフケアだけでは改善が難しい進行した菲薄化や深いシワに対しては、美容医療の力を借りることで、より直接的かつ短期間に口元の若々しさを取り戻すことが可能になります。

現代の美容医療はメスを使って切る手術だけでなく、注射やレーザーなどダウンタイムの少ない治療法が充実しています。

口輪筋のボリューム不足を補う治療や伸びてしまった人中を視覚的・物理的に短く見せる治療など、症状に合わせたアプローチが存在します。

医療機関での治療は、解剖学的な知識に基づいた根本的な改善が期待できるため、セルフケアの限界を感じた場合の有効な選択肢となります。

ヒアルロン酸注入によるボリューム回復

最も一般的で即効性があるのが唇へのヒアルロン酸注入です。痩せて薄くなった唇に適切な硬さのヒアルロン酸を注入することで物理的にボリュームを出し、Cカールを再構築します。

これにより、巻き込まれていた赤唇部が表に出てくるため、人中が短く見える効果が得られます。また、唇の縁(リップボーダー)をはっきりさせることで、縦ジワを目立たなくさせる効果もあります。

ボトックスとスキンブースター

口をすぼめる癖が強く、筋肉の過剰な収縮によってシワができている場合は、ボトックス注射で口輪筋の動きをマイルドに調整します。

また、「人中短縮ボトックス」と呼ばれる打ち方では上唇を巻き込む筋肉をリラックスさせ、上唇を反らせて人中を短く見せることができます。

さらに、肌育注射(スキンブースター)などで真皮層のコラーゲン密度を高め、薄くなった皮膚に厚みとハリを持たせる治療も、菲薄化対策として有効です。

人中短縮術(リップリフト)とレーザー治療

物理的に皮膚が伸びきってしまっている場合は鼻の下の皮膚を切除して縫い縮める「人中短縮術(リップリフト)」という外科手術も選択肢に入ります。

しかし、傷跡のリスクがあるため慎重な判断が必要です。侵襲の少ない方法としては、高周波(RF)やハイフ(HIFU)などの照射系治療で口周りの皮膚や筋膜を引き締め、コラーゲン生成を促すことでたるみを改善する方法も広く行われています。

主な美容医療アプローチの比較

治療法主な効果ダウンタイム・注意点
ヒアルロン酸注入唇のボリュームアップ、Cカール形成、縦ジワ改善、人中の視覚的短縮数日の腫れや内出血。入れすぎると不自然になるため、デザインセンスが必要
人中短縮ボトックス上唇を上向きに反らせる(Cカール)、口元の緊張緩和効果は数ヶ月。注入量や場所を誤ると、口が閉じにくくなるリスクがある
高周波・HIFU照射皮膚と筋膜の引き締め、コラーゲン生成によるハリ向上ダウンタイムはほぼ無いが、即効性は注入系より劣り、複数回の施術が必要な場合が多い
人中短縮術(外科)物理的に距離を短くする根本的解決鼻の下に傷跡が残るリスク。術後の後戻りや小鼻の広がりへの配慮が必要

よくある質問

トレーニングはいつから始めれば良いですか?

思い立ったその日が開始のベストタイミングです。

筋肉の菲薄化は30代後半から徐々に始まりますが、20代でも生活習慣によっては進行します。予防の意味でも早めに始めることが大切ですし、60代や70代になってからでも筋肉は刺激を与えれば活性化するため、遅すぎるということはありません。

口輪筋トレーニングをやりすぎるとシワになりますか?

はい、やり方を間違えたり、保湿不足のまま過度に行うとシワの原因になります。特に皮膚を強く折りたたむような動作を何百回も繰り返すと、そのラインがシワとして定着してしまいます。

回数よりも「効かせたい場所に正しく負荷がかかっているか」を重視し、必ずクリームなどで保湿をしてから行うようにしてください。

高い化粧品を使えば口輪筋は厚くなりますか?

残念ながら、化粧品だけで筋肉を厚くすることはできません。化粧品はあくまで皮膚(表皮・真皮)へのアプローチであり、その下にある筋肉層まで浸透して筋繊維を太くする効果はないからです。

ただし、レチノールやペプチド配合の化粧品で皮膚のハリを保つことは筋肉の衰えによる表面的なシワを目立たなくするために非常に重要です。

歯科矯正をすると人中が伸びると聞いたのですが本当ですか?

抜歯を伴う矯正などで口元の突出感が改善され、口元が奥に下がると皮膚が余って人中が伸びたように見えるケースは稀にあります。

しかし、これは骨格と歯列の変化によるものであり、必ずしも全員に起こるわけではありません。

矯正中は装置の影響で口が動かしにくく、口輪筋が衰えやすい環境になることもあるため、矯正中から意識的に口元を動かすケアを行うことが推奨されます。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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