表情ジワが定着する「拘縮(こうしゅく)」の恐怖|無表情でもシワが消えなくなる段階

表情ジワが定着する「拘縮(こうしゅく)」の恐怖|無表情でもシワが消えなくなる段階

ふとした瞬間に鏡を見たとき、あるいは写真に写った自分の顔を見たとき、笑ってもいないのに眉間や目尻、口元に深い線が残っていることに気づき、愕然とした経験はないでしょうか。

それは単なる乾燥による小ジワではなく、筋肉と皮膚が癒着し固まる「拘縮(こうしゅく)」という現象が起きているサインかもしれません。

表情のクセが長年積み重なることで、皮膚の土台となる筋肉が凝り固まり、皮膚が折り畳まれた状態で形状記憶されてしまうのです。この段階に至ると、通常の保湿ケアだけでは改善が難しくなります。

本記事では、この恐ろしい「拘縮」の正体と表情ジワが定着してしまう仕組み、そして今からできる対策について詳しく解説します。

目次

表情ジワが定着する「拘縮」の正体と皮膚内部の変化

表情ジワが消えなくなる根本的な原因は長年の表情の動きによって筋肉が過度に緊張し続け、その上にある皮膚と癒着して「拘縮」を起こすことで、皮膚が折り畳まれた形状を記憶してしまう物理的な変化にあります。

筋肉の過緊張と皮膚の折り目

私たちの顔には表情を作り出すための筋肉である「表情筋」が複雑に張り巡らされています。笑ったり怒ったりするたびにこの筋肉が収縮し、その動きに合わせて上の皮膚が引っ張られたり縮んだりします。

若い頃は皮膚に十分な弾力と厚みがあるため、表情を戻せば皮膚も元の平らな状態に戻ります。しかし、同じ表情を繰り返すことで特定の筋肉ばかりが酷使されると、その筋肉は常に緊張した状態、つまり「過緊張」の状態に陥ります。

筋肉が過緊張を起こすと、常に収縮したまま元に戻りにくくなります。これは肩こりで筋肉がカチカチに固まるのと同じ原理です。

顔の筋肉が収縮したまま固まると、その上にある皮膚も常に寄せられた状態になります。これが「拘縮」の始まりです。

何度も同じ場所で紙を折り曲げると、紙を開いても折り目がくっきりと残るように、皮膚にも深い「折り目」が刻まれてしまいます。これが、無表情でも消えないシワの正体です。

真皮層における弾力繊維の断裂と変性

筋肉の拘縮だけでなく、皮膚そのものの構造変化も深刻な影響を与えます。皮膚の奥にある「真皮層」には肌のハリや弾力を支えるコラーゲンやエラスチンといった繊維が網目状に存在しています。

表情の変化によって皮膚が繰り返し折り畳まれる場所では、このコラーゲンやエラスチンに物理的な負荷がかかり続けます。

長期間にわたって同じ箇所が折り曲げられ続けるとゴムが伸びきって切れてしまうように、コラーゲンやエラスチンが断裂したり、変性して硬くなったりします。これを「真皮の折れグセ」と呼びます。

一度断裂してしまった弾力繊維は、自然に修復されることは極めて困難です。筋肉の拘縮によって常に皮膚が寄せられている上に皮膚自体の弾力も失われているため、溝はますます深く、そして消えにくくなっていきます。

この段階では、皮膚の表面だけでなく、深部構造にまでダメージが及んでいることを理解する必要があります。

皮膚と筋肉の癒着による悪循環

さらに恐ろしいのが、皮膚と筋肉の「癒着」です。健康な状態であれば皮膚と筋肉の間には適度な滑りがあり、スムーズに動きます。

しかし、加齢や血行不良、そして長期間の筋肉の凝りによって、皮膚と筋肉をつなぐ組織が硬くなり、互いにベッタリとくっついてしまうことがあります。

癒着が起きると筋肉のわずかな動きがダイレクトに皮膚に伝わり、皮膚が過剰に引っ張られるようになります。また、皮膚が筋肉に張り付いているため、表情を戻そうとしても皮膚がスムーズに戻らず、シワが寄ったままの状態が続きやすくなります。

この「筋肉の拘縮」「真皮の断裂」「組織の癒着」という3つの要素が絡み合うことで表情ジワは深く定着し、セルフケアの限界を超えた頑固な悩みへと変化していくのです。

表情ジワと乾燥ジワの違い

ここで、一般的な乾燥ジワと、拘縮による定着ジワの違いを明確にしておきましょう。多くの人がこの二つを混同し、間違ったケアを続けてしまっています。

特徴乾燥ジワ(小ジワ)拘縮による定着ジワ
原因角質層の水分不足筋肉の過緊張と真皮の断裂
深さ皮膚の表面(表皮)のみ皮膚の深部(真皮)から筋肉
見た目ちりめん状で細かく浅いくっきりと深い溝、線状
表情との関係無表情でも薄く見える表情を作ると深くなり、無表情でも残る
改善の難易度保湿で比較的すぐに改善保湿だけでは改善が困難

日常に潜む拘縮を引き起こす主な原因と習慣

拘縮を引き起こす最大の要因は無意識のうちに行っている表情のクセや生活習慣の積み重ねであり、これに加齢による組織の劣化が加わることで症状が進行します。

無意識の「表情クセ」の蓄積

最も大きな原因は、自分では気づきにくい「表情のクセ」です。例えば、仕事に集中しているときに無意識に眉間にシワを寄せていたり、スマホを見るときに目を細めたり、考え事をするときに口をすぼめたりしていませんか。

これらの動作は、特定の筋肉だけに強い負荷をかけ続けます。一度や二度であれば問題ありませんが、毎日何時間も、そして何年も繰り返されることで、筋肉はその形状を記憶し始めます。

特にストレスを感じているときや緊張しているときは、顔の筋肉も強張りやすく、リラックスしている時間が短くなります。

寝ている間の歯ぎしりや食いしばりも、口周りや顎の筋肉を著しく硬直させ、マリオネットラインやほうれい線を深くする原因となります。

加齢による「形状記憶力」の強化

若い頃は肌に「復元力」があります。ゴムボールのように押してもすぐに元の形に戻る力です。しかし、加齢とともに肌の弾力を支えるコラーゲンやエラスチンの生産量は減少し、質も低下します。さらに、皮膚を下から支える皮下脂肪も減少し、骨も萎縮していきます。

土台となる骨や脂肪が減ることで皮膚が余り気味になり、たるみが生じます。たるんだ皮膚はシワになりやすく、そこに表情筋の収縮が加わると、より深い折り目がつきやすくなります。

つまり、加齢はシワを作る直接的な原因であると同時に、一度できたシワを戻らなくさせる「形状記憶力」を高めてしまう要因でもあるのです。

外部環境によるダメージの蓄積

紫外線や乾燥といった外部からのダメージも、拘縮によるシワの定着を後押しします。特に紫外線に含まれるUVA波は真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを破壊します(光老化)。

光老化によって弾力を失った肌は、表情の動きによる物理的な圧力に耐えられず、簡単に折れ曲がってしまいます。

また、現代社会特有の「スマホ首」や「猫背」などの姿勢の悪さも関係しています。姿勢が悪いと首や肩の筋肉が凝り固まり、血流が悪化します。

顔の筋肉への血流も滞るため老廃物が溜まりやすくなり、筋肉の柔軟性が失われ、拘縮が起きやすい環境が整ってしまうのです。

拘縮を招く具体的なNG習慣

以下のような習慣がある方は将来的な拘縮リスクが高い、あるいは既に進行している可能性があります。

  • 視力が合っていないメガネやコンタクトレンズを使用し、目を細めて物を見る
  • 仕事中や運転中など集中すると無意識に奥歯を噛み締めている
  • 寝るときに横向きやうつ伏せで寝て顔の片側を圧迫し続けている
  • 日焼け止めを塗らずに外出することが多く、紫外線対策が不十分である
  • 洗顔やクレンジングの際に肌を強くこすって摩擦を与えている
  • ストレスを溜め込みやすく、日常的に顔がこわばっていることが多い

表情ジワが定着するまでの進行レベル

表情ジワは一夜にしてできるものではなく、一時的な表情の跡から始まり、徐々に真皮層の損傷と筋肉の拘縮を伴う深い溝へと段階を経て進行していきます。

レベル1:可逆的な表情ジワの段階

初期段階ではシワは「表情を作ったとき」にだけ現れます。大笑いしたときの目尻のシワや驚いたときの額のシワなどがこれに当たります。表情を元に戻せば、シワはすぐに消えて平らな肌に戻ります。

この段階では、皮膚の弾力も残っており、筋肉の緊張も一時的なものです。お風呂上がりやしっかり保湿をした後には、シワの影すら見当たらないことも多いでしょう。この時点で適切なケアを行えば、深いシワへの進行を食い止めることは十分に可能です。

レベル2:うっすらと残り始める停滞期

次の段階に進むと、表情を戻してもうっすらと線が残るようになります。これは角質層の水分不足による乾燥ジワと、真皮層での初期の弾力低下が組み合わさっている状態です。

筋肉も徐々に硬くなり始めており、完全にリラックスできていない可能性があります。「最近、ファンデーションがシワに溜まるようになった」「夕方になると顔が疲れてシワっぽくなる」と感じるのは、このレベルにあるサインです。

まだ深い溝にはなっていませんが、皮膚には確実に「折りグセ」がつき始めています。

レベル3:拘縮による完全定着期

最終段階であるレベル3では、無表情のときでもくっきりと深いシワが刻まれています。指でシワを広げようとしても、溝の底が見えないほど深く食い込んでいることもあります。これが「拘縮」が完成してしまった状態です。

筋肉は短縮したまま固まり、真皮層のコラーゲン繊維は断裂し、皮膚組織が変性しています。この段階になると化粧品による保湿ケアだけでは改善が難しく、物理的に筋肉を緩めたり、皮膚の構造を立て直したりする専門的なアプローチが必要になります。

進行レベルごとの状態まとめ

各レベルにおける皮膚と筋肉の状態を整理します。

レベルシワの状態皮膚・筋肉の状態
レベル1(初期)表情を作った時だけ現れ、すぐに消える皮膚の弾力は保たれている。筋肉の緊張は一時的
レベル2(中期)無表情でもうっすらと線が見え、夕方に目立つ真皮層の弾力が低下し始める。筋肉に軽い凝りがある
レベル3(重度)無表情でも深い溝があり、指で伸ばしても消えない筋肉が拘縮し癒着。真皮層の繊維が断裂している

部位別に見る拘縮のリスクと特徴

顔の筋肉は部位によって動きや強さが異なるため、拘縮の現れ方やシワの深さにもそれぞれのエリア特有の傾向があり、部位に合わせた理解が大切です。

眉間:最も深く刻まれやすい「怒りのシワ」

眉間には「皺眉筋(しゅうびきん)」という強力な筋肉があります。この筋肉は眉を寄せるときに使われますが、非常に力が強く、厚みもあります。

悩み事や不快感、強い集中に伴って頻繁に収縮するため、最も拘縮が起きやすい部位の一つです。縦に深く入るシワは皮膚が厚い部分であるため溝も深くなりやすく、一度定着すると「不機嫌そう」「怒っている」という印象を他人に与え続けてしまいます。

筋肉が強く凝り固まり、ボコッとした盛り上がり(筋肉の厚み)を伴うことも少なくありません。

額:広範囲に及ぶ「驚きのシワ」

額のシワは、「前頭筋(ぜんとうきん)」という頭皮から眉にかけて広がる大きな筋肉によって作られます。目を開くときに、まぶたの力ではなく額の力で引き上げる癖がある人に多く見られます(眼瞼下垂気味の人に多い傾向があります)。

額のシワは横に長く波打つように現れるのが特徴です。範囲が広いため目立ちやすく、老けた印象を強く与えます。

前頭筋が拘縮すると頭皮も硬くなり、顔全体のたるみにつながることもあります。

目尻:皮膚の薄さが仇となる「笑いジワ」

目の周りは「眼輪筋(がんりんきん)」というドーナツ状の筋肉に囲まれています。目尻の皮膚は顔の中で最も薄く、皮脂腺も少ないため乾燥しやすい場所です。

笑ったときに眼輪筋が収縮してできるカラスの足跡のようなシワは最初はチャーミングに見えますが、皮膚が薄いために折り目がつきやすく、比較的早い段階で定着しやすい傾向があります。

拘縮が進むと、シワがこめかみの方まで長く伸びていくことがあります。

部位ごとの筋肉とシワの関係

各部位の筋肉の特徴と、それによってできるシワの傾向を把握しましょう。

部位関連する主な筋肉シワの特徴とリスク
眉間皺眉筋(しゅうびきん)
鼻根筋(びこんきん)
縦に入る深い溝。筋肉が厚く、力が強いため拘縮が頑固になりやすい
前頭筋(ぜんとうきん)横に走る長い波状の線。目を開ける癖と連動し、頭皮の硬さとも関係する
目尻眼輪筋(がんりんきん)放射状に広がる細かい線。皮膚が薄く乾燥しやすいため、定着が早い
口元口輪筋(こうりんきん)
笑筋(しょうきん)
ほうれい線やマリオネットライン。噛み締め癖や頬のたるみと複合して深くなる

あなたのシワは大丈夫?セルフチェック方法

自分のシワが単なる乾燥によるものか、それとも筋肉の拘縮による定着ジワなのかを見極めるには、鏡を使った簡単な動作チェックや触診による確認が有効です。

鏡を使った動作チェック

まずは、自然光の入る明るい場所で鏡を用意してください。真顔の状態から思い切り顔をしかめたり、満面の笑みを作ったりして、わざとシワを作ります。その状態で5秒間キープし、その後、脱力して真顔に戻ってください。

このとき、シワが瞬時に消えず、数秒から数十秒残るようであれば、皮膚の復元力が低下している証拠です。

さらに、脱力しても線がくっきりと残っている場合は、すでに拘縮の段階に入っている可能性が高いと言えます。

指を使った「つまみ」チェック

シワが気になる部分の皮膚を、親指と人差し指で優しくつまんでみてください。このとき、皮膚が柔らかく簡単につまめる場合は、まだ柔軟性が残っています。

しかし、皮膚が硬くてつまみにくい、あるいは皮膚の下に硬いしこりのような筋肉の塊を感じる場合は、筋肉と皮膚が癒着し、拘縮を起こしている可能性が高いです。

特に眉間の部分は、筋肉が盛り上がって硬くなっていることが触ってわかるケースが多くあります。

過去の写真との比較

5年前、10年前の自分の写真と比較するのも客観的な判断材料になります。以前は笑ったときにしか出なかったシワが、今の無表情の写真にも写り込んでいないか確認してください。

また、シワの長さや深さが以前よりも増している場合、それは進行性の拘縮ジワであると判断できます。主観的な記憶よりも、写真は残酷なまでに事実を映し出します。

要注意サインのリスト

以下の項目に当てはまる数が多いほど、拘縮によるシワの定着リスクが高まっています。

  • お風呂上がりで肌が潤っていても、シワの線が消えない
  • シワの部分を触ると周囲の皮膚よりも硬く感じる
  • ファンデーションを塗ると、すぐにシワの溝に入り込んで割れてしまう
  • 朝起きたときについた枕の跡が昼過ぎまで消えずに残っている
  • 力を抜いてリラックスしようとしても、眉間や額に力が入っている気がする。
  • 頭痛や肩こりがひどく、頭皮もカチカチに硬い。

拘縮を防ぎ改善するためのケアと対策

定着してしまったシワに対抗するためには皮膚表面の保湿だけでなく、真皮層のコラーゲン産生を促す成分の活用や、硬直した筋肉を物理的にほぐすアプローチが重要です。

有効成分を取り入れたスキンケア

拘縮によるシワは真皮層のダメージを伴うため、単に肌の表面を潤すだけでは不十分です。真皮のコラーゲンやエラスチンの生成をサポートし、肌のターンオーバーを促進する成分を取り入れる必要があります。

代表的な成分として「レチノール(ビタミンA)」や「ナイアシンアミド」があります。

これらはシワ改善の有効成分として厚生労働省に認可されているものもあり、長期的に使用することで、薄くなった真皮の厚みを取り戻し、折り畳まれた皮膚をふっくらと持ち上げる効果が期待できます。

筋肉の緊張を解くリラクゼーション

スキンケアと並行して、原因となっている筋肉の過緊張を緩めることが大切です。凝り固まった筋肉をほぐすためのマッサージや、顔のストレッチを取り入れましょう。

ただし、皮膚を強くこするのは禁物です。摩擦は新たなシワや色素沈着の原因になります。マッサージを行う際は、オイルやクリームをたっぷりと使い、筋肉を捉えて「垂直に圧をかける」イメージで行うのがコツです。

また、頭皮マッサージも非常に有効です。顔の筋肉は頭皮とつながっているため、頭皮を緩めることで額や目元の緊張が解けやすくなります。

生活習慣の見直しによる予防

新たな拘縮を作らないためには、日々のクセを見直すことが重要です。「眉間にシワを寄せない」「目を細めない」と意識するだけで、筋肉への負担は減ります。視力が合っていない場合は眼鏡やコンタクトを調整しましょう。

また、質の高い睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、日中に受けた肌ダメージを修復するために欠かせません。

ストレス管理を行い、リラックスする時間を設けることも、無意識の食いしばりや顔の強張りを防ぐことにつながります。

代表的なシワ改善成分とその働き

シワケア製品を選ぶ際に注目すべき成分をまとめました。

成分名主な働きと特徴期待できる効果
レチノール
(ビタミンA類)
ターンオーバー促進、コラーゲン産生促進、ヒアルロン酸産生促進皮膚に厚みを持たせ、深いシワを押し上げる。効果は高いが刺激が出ることがある
ナイアシンアミド
(ビタミンB3)
コラーゲン産生促進、メラニン生成抑制シワ改善と美白のダブル効果。刺激が少なく、敏感肌でも使いやすい
ニールワン好中球エラスターゼの働きを阻害し、真皮成分の分解を抑えるシワの進行を食い止め、改善する。日本で初めて認められたシワ改善成分
ペプチド類細胞間の伝達をサポートし、再生を促す。塗るボトックスと呼ばれる種類もある肌のハリを高める。表情筋の緊張を緩和する作用を持つものもある

セルフケアの限界と美容医療の選択肢

筋肉の拘縮が強く、深い溝となって定着してしまったシワに対しては、セルフケアの範囲を超えている場合があり、美容医療による物理的・科学的な介入が解決への近道となることがあります。

ボツリヌス療法による筋肉の遮断

拘縮した筋肉に対する最も代表的な治療が、ボツリヌス療法(通称ボトックス)です。この薬剤には、神経から筋肉への指令を一時的にブロックする作用があります。

注射することで過剰に緊張していた筋肉が強制的にリラックス状態になり、動かしたくても動かなくなります。筋肉の収縮が止まれば、皮膚が折り畳まれることもなくなるため、その間に皮膚が平らな状態を回復する時間が生まれます。

特に眉間や額、目尻の表情ジワに対しては、予防と改善の両面で非常に高い効果を発揮します。

ヒアルロン酸注入による溝の修復

すでに深く刻まれてしまった溝そのものを埋めるには、ヒアルロン酸注入が有効です。筋肉を止めても、長年の「折れグセ」で皮膚が凹んでしまっている場合、内側から物理的にボリュームを補って持ち上げる必要があります。

ヒアルロン酸はもともと体内にある成分なのでアレルギーのリスクが低く、注入直後からシワが目立たなくなる即効性が特徴です。

ボツリヌス療法と併用することで筋肉の動きを止めつつ溝を埋めるという、より完成度の高い仕上がりが期待できます。

高周波やレーザーによる再生促進

針を使わない治療として、HIFU(ハイフ)やRF(高周波)などのエネルギーデバイスを用いた治療もあります。

これらは熱エネルギーを真皮層や筋膜層に与えることで組織にわざと軽いダメージを与え、その修復過程でコラーゲンの大量生成を促すものです。皮膚全体のハリや弾力を底上げし、たるみを引き上げることで、シワを目立ちにくくします。

拘縮そのものを直接緩めるわけではありませんが、皮膚の土台を強化することで、シワができにくい肌質へと導きます。

主な美容医療アプローチの比較

それぞれの治療法には特徴と適応があります。

治療法アプローチの対象メリットとデメリット
ボツリヌス療法筋肉
(過緊張を緩める)
表情ジワの原因を絶つ。効果は3〜6ヶ月。表情がやや不自然になるリスクがある
ヒアルロン酸注入溝・凹み
(物理的に埋める)
即効性があり、無表情時のシワを消す。技術力によって仕上がりに差が出る
エネルギー治療
(HIFU/RF等)
真皮・筋膜
(コラーゲン増生)
顔全体の引き締め・肌質改善。深い定着ジワへの直接的な効果は緩やか

よくある質問

マッサージをすれば拘縮したシワは消えますか?

マッサージによって血行が促進され、一時的に筋肉の緊張がほぐれることでシワが薄くなったように感じることはあります。

しかし、すでに真皮層の繊維が断裂し、深い溝として定着してしまった「拘縮ジワ」をマッサージだけで完全に消すことは非常に困難です。また、自己流の強いマッサージは皮膚を伸ばしてたるみを悪化させたり、摩擦で色素沈着を起こしたりするリスクがあります。

マッサージはあくまで「予防」や「現状維持」の手段として、優しく行うことが大切です。

まだ20代ですが、今から対策をする必要はありますか?

もちろんです。20代であっても視力が悪くて目を細める癖があったり、スマホの見すぎで表情が固まっていたりすれば、若くしてシワが定着するリスクは十分にあります。これを「スマホ老眼」ならぬ「スマホ顔」と呼ぶこともあります。

若い肌は回復力が高いですが、予防に早すぎるということはありません。今のうちから保湿を徹底し、表情のクセを意識して直すことで、30代、40代になったときの肌の状態に雲泥の差が出ます。

一度できてしまった深いシワは、もう治らないのでしょうか?

完全に「ゼロ」に戻す、つまり赤ちゃんの頃のような肌に戻すことは難しいですが、適切なケアと治療によって、「目立たなくする」「浅くする」ことは十分に可能です。

スキンケアで肌の弾力を取り戻しつつ、必要に応じて美容医療の力を借りることで、深い溝をかなり改善できた例は数多く存在します。

諦めずに、現在の肌の状態に合ったアプローチを選択することが重要です。

表情を動かさないようにすればシワはできませんか?

理論上は表情筋を使わなければシワはできませんが、無表情で生活することは現実的ではありませんし、表情が乏しいと筋肉が衰えてたるみの原因にもなります。

大切なのは「表情を動かさないこと」ではなく、「表情を動かした後に、きちんと元の位置に戻すこと(リラックスさせること)」と、「特定の表情ばかりを繰り返さないこと」です。

よく笑うことは精神衛生上も良いことですが、笑った後は顔を緩める、眉間にシワを寄せないように気をつけるといったメリハリが大切です。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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