顔の脂肪減少(ボリュームロス)による皮膚の余り|痩せると老けて見える「風船の原理」

美容や健康のためにダイエットに励んだ結果、体重計の数値は目標を達成したにもかかわらず、鏡に映る自分の顔が以前よりも老けて見えてしまうという現象は少なくありません。

これは単なる肌荒れや疲れではなく、顔のボリュームロスと皮膚の余剰によって引き起こされる構造的な変化です。

本記事では、この現象を「風船の原理」として捉え、なぜ脂肪が減ると皮膚がたるむのか、骨格や靭帯との関係性はどうなっているのか、そして若々しい印象を保つためにはどのような視点が必要なのかを、解剖学的な知見を交えて徹底的に解説します。

痩せても美しさを損なわないための本質的な理解を深めていきましょう。

目次

風船の原理とは何か?ボリュームロスが招く見た目の老化現象

顔のボリュームが減少することで皮膚が余り、結果としてシワやたるみが発生する現象は、空気が抜けた風船の状態に例えることで容易に理解できます。

中身が詰まっているときはパンと張っていた表面が中身が減ることで表面積を持て余し、ヨレやシワを生み出すこの物理的な法則こそが、顔面で起きている老化の正体です。

中身と表面積のバランス崩壊が引き起こすたるみ

私たちの顔の皮膚は、その下にある骨、筋肉、そして脂肪組織という「中身」によって内側から支えられ、押し上げられています。

若い頃の顔がハリに満ちて見えるのは、この中身のボリュームが十分にあり、皮膚という「包装紙」を隙間なく満たしているからです。

しかし、加齢や急激な体重減少によって脂肪や骨といった中身の体積が減少すると、皮膚の表面積はすぐには縮まないため、中身に対して外側の皮膚が過剰な状態となります。

この余った皮膚は重力の影響を受け、下方向へと垂れ下がります。これがフェイスラインの崩れやほうれい線の深刻化、口元のマリオネットラインといった具体的な老化サインとして現れます。

つまり、皮膚そのものが伸びたというよりも、中身が小さくなったことで相対的に皮膚が余ってしまった状態といえます。

風船の空気が抜けてシワシワになるのと同様に、顔のボリュームロスは皮膚の平滑性を損なう直接的な原因となります。

風船の状態変化と顔の変化の対比

状態風船の見た目顔の見た目
中身が充満している時表面にハリがあり、光を反射するほど滑らかでシワがない頬が高く、皮膚にピンとした緊張感があり、若々しい印象を与える
中身が減少した時表面に細かなシワが寄り、全体的に下垂して形が崩れるこめかみや頬がこけ、余った皮膚が法令線やフェイスラインに溜まる
急激に中身を抜いた時ゴムが収縮しきれず、深い溝やたるみが顕著に残るやつれた印象になり、皮膚の質感も厚くゴワついて見えることがある

「痩せる=美しい」という誤解と顔貌への影響

多くの人が「痩せれば顔が小さくなり、美しくなる」と考えがちですが、大人の顔においてはその方程式が必ずしも成立しません。

特に30代以降において、無計画に体脂肪を落とすことは、顔の美しさを支える重要な「クッション」を失うことを意味します。

若い世代であれば皮膚の収縮力が強いため、多少のボリューム減少にも皮膚が追従し、引き締まった印象になります。

しかし、年齢を重ねてエラスチンやコラーゲンが減少した肌では、一度伸びた皮膚が元に戻る力(弾性)が弱まっています。

その結果、脂肪が減った分だけ皮膚が収縮するのではなく、余った皮膚が重力に従って垂れ下がり、いわゆる「ムササビ状態」のような現象が顔の中で起こります。

頬の位置が下がることで顔の重心が低くなり、実際の年齢以上に老けた印象を与えてしまうのです。美しさを追求するためのダイエットが、皮肉にも老け顔を加速させる要因となることを深く認識する必要があります。

顔の脂肪層の構造変化と深層・浅層脂肪の役割分担

顔の脂肪は一塊の肉ではなく、深さや場所によって明確に役割が異なる複数の「コンパートメント(区画)」に分かれています。

この脂肪の減少は均一に起こるのではなく、部位や深さによって異なる減り方をするため、それが独特の凹凸や影を作り出し、老け顔を形成します。

構造を支える深層脂肪(ディープファット)の減少

顔の土台としての役割を果たすのが、骨膜の上に位置する深層脂肪です。

特に目の下にあるSOOF(眼輪筋下脂肪)や、頬の深部にあるDeep cheek fat(深部頬脂肪体)は顔の立体感を出し、上の組織を持ち上げる重要な柱のような存在です。

加齢や過度な減量によってこの深層脂肪が萎縮すると、その上に乗っている筋肉や皮膚を支えきれなくなります。

建物の基礎となる柱が細くなれば、屋根や壁が崩れ落ちるのと同様に深層脂肪のボリュームロスは、顔全体が雪崩のように下落する引き金となります。

単に「顔が痩せた」と感じるだけでなく、目の下が窪んでクマが目立つようになったり、ゴルゴラインと呼ばれる線が入ったりするのは、この深層脂肪の萎縮が主要な原因です。

脂肪層の違いによる影響の比較

脂肪の種類主な役割減少・変化時の影響
深層脂肪(Deep Fat)顔のボリュームと高さを出し、組織を下から支える土台となる組織全体の支えを失い、顔が雪崩のように下垂する。凹みや影の主因
浅層脂肪(Superficial Fat)皮膚のすぐ下にあり、肌の質感や柔らかさを滑らかに見せる位置が移動(下垂)することで、ほうれい線やマリオネットラインの重みとなる
眼窩内脂肪眼球を保護するクッションの役割を果たす萎縮すると目が窪むが、逆に突出して目袋となるケースもある

移動する浅層脂肪(スーパーフィシャルファット)の問題

皮膚の直下にある浅層脂肪は深層脂肪とは異なる挙動を見せます。深層脂肪が「萎縮」してボリュームを失う傾向が強いのに対し、浅層脂肪は「下垂」つまり位置が移動する傾向が強く見られます。

若い頃は頬の高い位置にあった脂肪が深層脂肪の支えを失うことや、それらを繋ぎ止めている靭帯の緩みによって、ズルズルと下へ滑り落ちていきます。

この滑り落ちた浅層脂肪は、鼻翼基部(小鼻の横)や口角周辺で堰き止められます。これがほうれい線の上に覆いかぶさる厚い肉となり、あるいは口元の横に溜まる膨らみ(ジョールファット)となって顔の輪郭を四角く変形させます。

つまり、顔の上半分では「ボリュームロスによる凹み」が起き、顔の下半分では「落ちてきた脂肪による過剰な膨らみ」が起きるという、上下でのアンバランスが生じるのです。

この複合的な変化を理解することが、適切な対策への第一歩となります。

支持組織であるリテイニングリガメント(靭帯)の劣化と皮膚のズレ

顔の皮膚や脂肪が骨から剥がれ落ちないように繋ぎ止めている強力な繊維組織が「リテイニングリガメント(支持靭帯)」です。

ボリュームロスと並んで、この靭帯の劣化が皮膚の余り感を強調させる大きな要因となります。脂肪が減ることで靭帯にかかる負担が変化し、たるみを加速させるのです。

顔を支える杭としての靭帯の機能

リテイニングリガメントは貝殻が岩に張り付く足のように、皮膚と骨(または筋膜)を強固に連結しています。顔には主要な靭帯がいくつか存在し、それぞれが特定のエリアの皮膚をあるべき位置に固定しています。

例えば、頬骨のあたりにある靭帯は頬の皮膚や脂肪が口元に落ちてこないように吊り上げるハンモックの支柱のような役割を果たしています。

顔のボリュームが保たれている間は脂肪組織自体が内側からパンと張っているため、靭帯への負担も分散されます。しかし、脂肪が減少して皮膚に余裕ができると、重力の影響がダイレクトに靭帯にかかるようになります。

長年使い込んだゴムが伸びてしまうように、靭帯も加齢とともに徐々に伸展し、緩んでいきます。一度緩んでしまった靭帯は自然には元の長さに戻らないため、支えを失った皮膚と脂肪はさらに下へと移動することになります。

主要な靭帯とその影響範囲

  • 頬骨靭帯(Zygomatic Ligament):頬の皮膚と脂肪を支える最も重要な靭帯の一つです。これが緩むと頬全体が下がり、ほうれい線が深くなります。
  • 咬筋皮膚靭帯(Masseteric Ligament):フェイスラインを支えています。ここが緩むと頬の脂肪がフェイスラインを超えて垂れ下がり、ブルドッグのような輪郭を形成します。
  • 下顎靭帯(Mandibular Ligament):口角の下あたりで皮膚を固定しています。上の組織が落ちてきた際、ここで食い止められるため、マリオネットライン特有の段差が生じます。

脂肪減少が靭帯のゆるみを助長する理由

風船の例に戻ると、パンパンに膨らんだ風船にテープを貼っている状態を想像してください。風船が膨らんでいるときはテープもピンと張っていますが、空気が抜けると風船の表面がたわみ、テープの固定力も不安定になります。

顔においても同様で、深層脂肪という土台が減ることで靭帯の根元(骨側)と付着部(皮膚側)の距離やテンションが変化します。特に、急激なダイエットで脂肪を一気に減らすと、皮膚と靭帯がその変化に適応する時間がありません。

中身が急になくなったことで皮膚をつなぎとめている靭帯にかかる重力のベクトルが変わり、組織全体が雪崩を起こしやすくなるのです。

痩せたことで「顔が下がった」と感じるのは、脂肪が減ったことそのものに加え、脂肪によって保たれていた靭帯のテンションが失われ、支えが効かなくなった結果であるといえます。

骨萎縮(骨粗鬆症)がもたらす顔面の土台崩壊

皮膚の余りやたるみを考える際、皮膚や脂肪といった軟部組織だけに注目しがちですが、実はそのさらに奥にある「骨」の変化が決定的かつ不可逆的な影響を与えています。

加齢に伴う骨密度の低下は体だけでなく顔面骨でも進行し、これが「風船の原理」における中身の減少をさらに深刻化させます。

頭蓋骨の縮小と皮膚の余剰の関係

顔の骨は加齢とともに吸収され、体積が減少していきます。これを骨萎縮と呼びます。頭蓋骨全体が小さくなるということは、表面を覆っている皮膚に対する「中身」が減ることを意味します。

例えば、テントのポールが短くなったり細くなったりすれば、テントの布地(皮膚)は当然たるんでシワが寄ります。これと同じことが顔面で起きています。

特に女性は閉経後のホルモンバランスの変化により、骨密度の低下が著しくなる傾向があります。

若い頃と同じ体重を維持していても骨というフレーム自体が縮んでしまうため、相対的に皮膚が余ってしまい、顔全体の印象がぼやけたり、締まりがなくなったりして見えます。

脂肪の減少に骨の縮小が加わることで、ボリュームロスは加速度的に進行し、皮膚の余りを生じさせるのです。

骨吸収が顕著に現れる部位とその変化

部位骨の変化外見への影響
眼窩(目の周りの穴)穴が外側および下側へ拡大するように骨が溶ける目が落ち窪み、目尻が下がる。目の下のクマやたるみが強調される
上顎骨(鼻の横の骨)骨が後退し、高さが失われる中顔面の平坦化を招き、ほうれい線の溝が深くなる原因となる
下顎骨(あごの骨)エラやオトガイ(あご先)の骨量が減り、角が丸くなるフェイスラインのシャープさが失われ、顎と首の境目が曖昧になる

アイホールと顎ラインの変化による老け見え

骨萎縮の中でも特に見た目に大きな影響を与えるのが、眼窩(アイホール)の拡大と下顎骨の変化です。眼窩の骨が吸収されて穴が広がると、眼球を支える力が弱まり、眼球自体がやや下後方へ下がります。

これに伴って眼窩脂肪が前に押し出され、目の下の膨らみ(目袋)となる一方で、その下の骨は痩せているため、段差による影が色濃く現れます。

また、下顎骨の体積が減ることは、顔の下半分の皮膚をピンと張らせていた「つっかえ棒」を失うことを意味します。顎の骨が小さくなると、余った皮膚や降りてきた脂肪が行き場を失い、顎の下や首周りに溜まります。

痩せているのに二重顎になったり、首の皮膚がたるんで七面鳥のように見えたりするのは、脂肪がついたからではなく、骨の縮小によって皮膚が余ってしまった典型的な「風船の原理」による現象です。

皮膚自体の質の低下と弾力性の喪失

ボリュームロスが起きたとしても、皮膚にゴムのような強い伸縮性があれば、ある程度は縮んで顔の形状にフィットするはずです。

しかし、年齢を重ねた肌は「伸びきったゴム」や「古い布」のような状態になっており、一度伸びると元に戻る力が弱まっています。これが、脂肪減少による皮膚の余りを決定的なものにします。

コラーゲンとエラスチンの変性と減少

皮膚の真皮層にあるコラーゲンは強度を、エラスチンは弾力を司っています。

これらは網目状の構造を作り、肌のハリを維持していますが、紫外線ダメージ(光老化)や酸化ストレス、そして加齢によってその数は減少し、質も劣化します。

健康なエラスチンが豊富であれば、ダイエットで顔の脂肪が減っても、皮膚は収縮して新しいボリュームに適合しようとします。

しかし、40代、50代と年齢が進むにつれて、エラスチンの生成能力は著しく低下します。変性したエラスチンは弾力を失い、硬くなります。

この状態で中身のボリュームが減ると、皮膚は縮むことができず、重力に負けて垂れ下がるしかありません。

紙袋の中に重い荷物を入れて持ち上げた後、荷物を取り出しても紙袋にシワが残るように、弾力を失った皮膚には形状記憶の能力がなく、たるみとして定着してしまうのです。

皮膚弾力を低下させる主な要因

  • 紫外線(UVA):真皮層まで到達し、エラスチン繊維を切断・変性させ、深いシワやたるみの原因となる
  • 糖化ストレス:余分な糖がタンパク質と結びつき、コラーゲン繊維を硬く脆くさせ、肌の柔軟性を奪う
  • 乾燥とバリア機能低下:慢性的な乾燥は表皮のターンオーバーを乱し、真皮の環境悪化を招いて弾力低下を助長する

「伸びた皮膚」が戻らない不可逆性

残念ながら、一度大きく伸びてしまい、かつ弾力を失った皮膚を化粧品やマッサージだけで元のピンとした状態に戻すことは極めて困難です。

皮膚には限界点があり、それを超えて伸展した後に中身が急激に減ると余剰皮膚として残存します。これは妊娠線やお腹の皮膚のたるみと同じ原理です。

顔においてはこの「余剰皮膚」が、まぶたの被さり、口元のカーテンのようなシワ、首の横ジワなどとして現れます。

したがって、ボリュームロスへの対策を考える際には、単に減った分を埋めればよいという単純な足し算ではなく、皮膚の収縮力がどれだけ残っているかを見極める必要があります。

皮膚の質そのものが低下している場合、ボリュームを回復させるアプローチと同時に、皮膚そのものを引き締める(タイトニング)アプローチが必要となります。

部位別のボリュームロスと皮膚余りの特徴

顔の脂肪減少と皮膚の余りは顔全体で均一に起こるのではなく、部位ごとに特徴的な現れ方をします。それぞれのエリアでどのような変化が起き、それがどのような老け印象に繋がるのかを詳しく見ていきます。

こめかみ・額の痩せと目の下の窪み

顔の上部、特にこめかみや額は脂肪層が比較的薄いエリアですが、ここのボリュームロスは顔の輪郭を大きく変えます。

こめかみの脂肪が減ると、骨の形が浮き彫りになり、骸骨のようなゴツゴツした印象を与えます。また、こめかみのボリュームが減ることで目尻や眉を引き上げていた支持力が失われ、まぶたの被さりや目尻の下がりに直結します。

目の下に関しては、前述の通り深層脂肪の減少と骨の萎縮が同時に進行します。目の下の皮膚は体の中で最も薄いため、中身の減少がダイレクトに形状の変化として現れます。

ボリュームが減ることで余った皮膚は細かなちりめんジワとなり、光の反射を乱して肌をくすませて見せます。

中顔面の平坦化とほうれい線の深化

若々しい顔の象徴は、頬の高い位置にあるふっくらとしたボリューム(Ogee Curve)です。しかし、中顔面(目の下から口元までのエリア)の深層脂肪が減少すると、このカーブが失われ、顔が平坦になります。

テントの支柱が倒れたように前方への張り出しがなくなると、その上を覆っていた皮膚は余り、重力に従って下方および内側(鼻側)へと雪崩れ込みます。これがほうれい線を深くする主要因です。

ほうれい線は単なるシワではなく、頬の組織が下がってできた「境界線」であり「溝」です。

痩せて頬の肉が落ちたはずなのにほうれい線が目立つようになるのは、落ちた肉そのものの量よりも、支えを失って皮膚が雪崩れ込んできた影響の方が大きいからです。

部位ごとのボリュームロスによる症状

エリア現象見た目の変化
こめかみ・額脂肪減少による凹みと皮膚のたわみ輪郭がひょうたん型になり、老けて見える。眉尻や目尻が下がる。
頬(中顔面)深部脂肪の萎縮による高さの喪失顔がのっぺりと平面的になる。目の下にゴルゴラインが出現する。
口周り・顎上からの荷重による皮膚の集積マリオネットラインや顎下のたるみが発生し、不機嫌そうな印象になる。

ボリュームロスに対する適切なアプローチと視点

「風船の原理」によって生じた老化現象に対し、闇雲に何かを行えば良いというわけではありません。原因が「中身の減少」と「皮膚の余り」にある以上、対策も論理的にその原因を解消する方向で考えることが重要です。

ここでは物理的な視点に基づいた解決の方向性を解説します。

「足し算」のアプローチ:失われたボリュームを補う

萎んだ風船を元に戻す最も直接的な方法は、中身を補充することです。顔においても、減少した骨や深層脂肪の代わりとなるものを補填し、再び皮膚を内側から持ち上げるアプローチが有効です。

これにより、余っていた皮膚が再びパンと張り、シワやたるみが改善します。具体的には、ヒアルロン酸注入や自身の脂肪を移植する方法などがこれに当たります。

重要なのは、単に膨らませれば良いのではなく、解剖学的に正しい位置(減少した深層脂肪や骨のある場所)に的確に補うことです。

適切な位置にボリュームを戻すことでリテイニングリガメントが再び引き上がり、自然なリフトアップ効果が得られます。この「足し算」の発想は、痩せて老けてしまった顔を若々しく見せるための基盤となります。

「引き締め」のアプローチ:余った皮膚を収縮させる

中身を足すことには抵抗がある場合や、皮膚の余りがあまりに大きい場合は、包装紙である皮膚そのものを縮める、あるいは切り取るというアプローチが必要です。

熱エネルギーを用いて真皮層や筋膜(SMAS)に働きかけ、タンパク質の熱変性によって組織をギュッと凝縮させる方法です。

HIFU(高密度焦点式超音波)や高周波(RF)治療などがこのカテゴリに属します。これらは伸びてしまったゴムに熱を加えて縮めるようなイメージで、皮膚と皮下組織のタイトニングを行います。

ただし、ボリュームが著しく減少している状態で引き締めだけを強力に行うと、さらに顔がこけて見えてしまうリスクもあるため、ボリューム補充とのバランスを見極めることが大切です。

治療アプローチの比較まとめ

アプローチ目的適している状態
ボリューム補充(注入系など)減った中身(骨・脂肪)を補い、内側から皮膚を張り出すこめかみの凹み、頬のコケ、深いほうれい線、骨萎縮が顕著な場合
タイトニング(熱治療など)熱エネルギーで皮膚や筋膜を収縮させ、余った面積を小さくする脂肪は少ないが皮膚のたるみが目立つ、フェイスラインのもたつきがある場合
外科的切除(リフト手術など)余分な皮膚を物理的に切り取り、縫い縮める皮膚の余剰が著しく、注入や熱治療では改善が見込めない場合

日常生活で意識すべき予防と進行抑制

美容医療に頼る前に、あるいは美容医療の効果を持続させるために、日常生活の中で「風船の原理」による老化を加速させない意識を持つことが重要です。

特に体重管理と栄養摂取の観点は、顔の若さを保つ上で無視できません。

急激な体重変動を避けることの重要性

「風船の原理」が最も悪い形で現れるのは、短期間で急激に体重を落とした時です。ゆっくりとしたペースで体重が減れば、皮膚の代謝機能により、ある程度は縮んで適応することができます。

しかし、急速な脂肪減少には皮膚の収縮が追いつかず、伸びきった状態で取り残されてしまいます。

いわゆる「ダイエット皺(じわ)」を作らないためには月間での減量幅を体重の数パーセント以内に留めるなど、緩やかなカーブを描くことが大切です。

また、ヨーヨーダイエットのように太ったり痩せたりを繰り返すことは、風船を何度も膨らませたりしぼませたりする行為と同じで、皮膚の弾力繊維を著しく疲弊させ、将来的な深刻なたるみを招きます。

皮膚と組織の材料となる栄養素の確保

無理な食事制限は顔の脂肪を減らすだけでなく、皮膚のハリを保つコラーゲンやエラスチンの材料となるタンパク質、骨を維持するカルシウムやビタミンD、ミネラルなどの不足を招きます。

中身(脂肪・骨)を減らしながら、外側(皮膚)の質まで落とすという、老化にとってのダブルパンチとなりかねません。

痩せる過程であっても、高タンパク質の食事を心がけ、抗酸化作用のあるビタミン類を十分に摂取することは、皮膚の弾力を維持するために必要です。

質の良い皮膚であれば多少のボリュームロスが起きても、ある程度の収縮力(リコイル)を発揮し、たるみを最小限に抑えることができます。「食べる量を減らしても、栄養の質は高める」という意識が、顔の美しさを守ります。

よくある質問

マッサージで顔のたるみを引き上げることはできますか?

残念ながら、自己流の強いマッサージでたるみを物理的に引き上げることは困難であり、むしろ逆効果になる可能性があります。

皮膚や靭帯は強い摩擦や牽引力に弱く、強くこすったり引っ張ったりすることで、リテイニングリガメントをさらに緩ませてしまうリスクがあります。また、摩擦によって肝斑などの色素沈着を招くこともあります。

マッサージを行うのであれば、リンパの流れを良くする程度の極めて優しいタッチに留めることが大切です。

ゆっくり痩せれば、顔のたるみは防げますか?

急激に痩せる場合に比べて、時間をかけてゆっくりと体重を落とす方が皮膚が収縮して適応する時間を稼げるため、たるみのリスクを軽減することは可能です。

しかし、加齢によって皮膚の弾力が低下している場合や、大幅な減量(例えば10kg以上など)を行う場合は、どれだけゆっくり痩せても、ある程度の皮膚の余りは避けられないことがあります。

年齢やもともとの皮膚の質に大きく左右されることを理解しておく必要があります。

高い化粧品を使えば、減ったボリュームは戻りますか?

化粧品はあくまで表皮や真皮の浅い層に対する保湿や保護が主な役割であり、物理的に減ってしまった皮下脂肪や骨のボリュームを増やす効果は期待できません。

肌にハリを与えることで小ジワを目立たなくする効果はありますが、ボリュームロスによる構造的なへこみや深いたるみを、化粧品だけで根本的に解決することは難しいのが現実です。

構造的な変化には、構造的なアプローチが必要となります。

なぜ年齢とともに顔が四角く大きくなるのですか?

これは「風船の原理」と重力の影響による複合的な結果です。こめかみや頬などの顔の上部のボリュームが減って窪む一方で、支えを失った皮膚や浅層脂肪が下へと移動し、フェイスラインや顎周りに溜まるからです。

上はスカスカになり、下に溜まることで、顔の重心が下がり、逆三角形だった若々しい輪郭が台形や四角形へと変化していきます。

これを防ぐには、上のボリュームを保ち、下の組織を引き締めるメリハリが重要です。

一度伸びた皮膚は二度と戻らないのでしょうか?

完全に元の状態に自然に戻ることは難しいですが、改善の余地はあります。皮膚にはターンオーバー機能があり、適切な栄養摂取やケアによってある程度の弾力を取り戻すことは可能です。

しかし、伸びた面積が大きい場合や、真皮層の弾性線維が深く断裂している場合は、自然治癒での回復には限界があります。

その場合は美容医療によるタイトニング治療や、場合によっては余剰皮膚を切除するなどの物理的な処置が選択肢に入ってきます。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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