前頭筋(ぜんとうきん)の酷使と額の横ジワ|目を見開く癖が刻む老化サイン

前頭筋(ぜんとうきん)の酷使と額の横ジワ|目を見開く癖が刻む老化サイン

鏡を見たときに、ふと額に刻まれた横ジワが気になり、指で伸ばしてみても跡が残っていることに不安を感じる方が増えています。

このシワの正体は、単なる皮膚の乾燥や加齢によるたるみだけではありません。実は、眉毛を上げて目を見開く際に使う「前頭筋(ぜんとうきん)」の過剰な働きが大きく関与しています。

無意識のうちに目を見開く癖が定着すると、前頭筋が常に緊張状態となり、皮膚が折り畳まれ続けることで深い溝を作り出します。

本記事では、なぜ前頭筋を酷使してしまうのかという根本的な原因から、ご自身でできるチェック方法、そして美容医療や日々のケアによる改善策までを網羅的に解説します。

額のシワは老けた印象を与える大きな要因ですが、正しい知識を持って対処することで、若々しく滑らかな額を取り戻すことが可能です。

目次

前頭筋の酷使が額の横ジワを深くする根本的な理由

額に深く刻まれる横ジワの主たる原因は、前頭筋という筋肉が過剰に収縮を繰り返すことにあります。

皮膚表面だけの問題ではなく、その下にある筋肉の動きがダイレクトに皮膚を折り曲げ、時間をかけて真皮層にダメージを蓄積させる結果、消えないシワとして定着します。

通常、私たちは目を開ける際に眼瞼挙筋(がんけんきょきん)というまぶた専用の筋肉を使いますが、何らかの理由でこの筋肉がうまく働かない場合、代償動作として前頭筋を使って眉毛を持ち上げることで視野を確保しようとします。この代償動作こそが、額の横ジワを深くする最大の要因です。

前頭筋と表情筋の連動性が生む皮膚の折り畳み

顔の表情を作る筋肉は骨と皮膚、あるいは皮膚同士をつなぐ皮筋(ひきん)と呼ばれる構造をしています。体の他の筋肉が骨と骨をつないで関節を動かすのとは異なり、表情筋が収縮すると直上の皮膚が直接引っ張られて動きます。

前頭筋は眉毛の上から頭頂部に向かって縦方向に走っている大きな筋肉です。この筋肉が収縮すると、眉毛が引き上げられると同時に、額の皮膚はアコーディオンのように横方向に折り畳まれます。

驚いたときや目を見開くときに一時的にシワが寄る程度であれば、皮膚の弾力性によってすぐに元に戻ります。しかし、視界を確保するために常に眉を上げているような状態が続くと、皮膚は同じ場所で何度も折り曲げられ続けます。

紙を何度も折り曲げると折り目がくっきりと残るように、皮膚もまた、繰り返される物理的な圧迫によって繊維組織が断裂し、深い溝を形成してしまいます。

特に前頭筋は面積が広く、額全体を覆っているため、その影響は額の端から端まで広範囲に及ぶことが多いのです。

筋肉の過緊張と皮膚への負担関係

筋肉の状態皮膚への物理的影響シワの現れ方
一時的な収縮(表情作り)一過性の折り畳み無表情に戻れば消失する浅い線
慢性的な過緊張(癖)持続的な圧迫と折り畳み表情を戻しても薄く残る線
拘縮(凝り固まり)真皮構造の断裂・変性深く刻まれ、指で伸ばしても消えない溝

真皮層へのダメージとコラーゲン繊維の断裂

前頭筋の収縮によって皮膚が折り畳まれる際、皮膚の奥にある真皮層には大きな負担がかかります。真皮層はコラーゲンやエラスチンといった弾力繊維が網目状に張り巡らされ、肌のハリや弾力を支えている重要な組織です。

しかし、筋肉の動きによって繰り返し強い力が加わると、この網目構造が徐々に破壊されていきます。初期段階では皮膚の水分量や弾力が十分にあれば復元可能です。

しかし、長年にわたって「眉を上げる」という動作を何万回、何十万回と繰り返すうちにコラーゲン繊維が断裂したり、変性して硬くなったりします。これを「皮膚の刻まれ」と呼びます。

一度真皮層の構造が変化して深く刻まれてしまうと、単に筋肉をリラックスさせるだけではシワが消えなくなります。これが表情を作っていないときでも額に横ジワが残ってしまう状態であり、老化サインとして認識される大きな理由です。

頭皮とつながる筋肉の緊張状態が続くリスク

前頭筋は単独で存在しているわけではなく、頭頂部にある「帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)」という膜を通じて、後頭部にある後頭筋(こうとうきん)とつながっています。

つまり、額の筋肉が緊張しているときは、頭皮全体、さらには首や肩の後ろ側まで緊張が連鎖している可能性が高いといえます。

前頭筋を酷使して目を開ける癖がある人は常に頭皮が前方へ引っ張られている状態にあります。これにより頭皮の血流が悪化し、頭皮が硬くなることがあります。

頭皮が硬くなると顔の皮膚を引き上げる力が弱まり、結果として額だけでなくまぶたのたるみも進行させます。まぶたがたるむと視界が狭くなるため、さらに前頭筋を使って目を見開こうとする悪循環に陥ります。

この「負のループ」を断ち切らない限り、額の横ジワは深くなる一方であり、根本的な解決には至りません。

無意識に目を見開く癖の背後にある原因

多くの人は自分が額の筋肉を使って目を開けていることに気づいていません。この動作は無意識に行われる習慣であり、その背景には「そうしなければ目を開けられない」あるいは「見えにくい」という物理的な事情が隠れています。

前頭筋への依存を引き起こす原因を特定することは、シワ対策の第一歩として極めて重要です。主な原因としては、まぶたの機能低下や生活習慣による目の酷使などが挙げられます。

眼瞼下垂(がんけんかすい)による視野の狭窄

前頭筋を使ってしまう最大の原因として挙げられるのが「眼瞼下垂」です。これは、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋の力が弱まったり、挙筋とまぶたをつなぐ腱膜が伸びてしまったりすることで、まぶたが十分に上がらなくなる状態を指します。

まぶたが瞳孔にかかってくると、脳は「視界が狭い」と判断し、無意識のうちに補助的な筋肉である前頭筋に指令を出して、眉毛ごとまぶたを引き上げようとします。

眼瞼下垂には加齢によって腱膜が緩む後天的なものや、ハードコンタクトレンズの長期使用、目をこする癖などが原因で起こるものがあります。

自分では目をぱっちり開けているつもりでも、実際には額に深いシワを寄せながら必死に眉を持ち上げているケースが非常に多く見られます。

この場合、額のシワは単なる老化現象ではなく、眼瞼下垂という機能障害のサインであると捉える必要があります。

スマートフォンやパソコン作業による眼精疲労

現代人の生活に欠かせないスマートフォンやパソコンの長時間使用も、前頭筋の緊張を招く大きな要因です。

画面を凝視するとき私たちは瞬きの回数が減り、目の周りの筋肉が固まりがちです。さらに、小さな文字を読もうとするときや、画面の光刺激によって目が疲れてくると、まぶたが重く感じるようになります。

重くなったまぶたを無理に開けようとすると自然と眉に力が入り、前頭筋が動員されます。また、下を向いてスマートフォンを見る姿勢は重力によって顔の皮膚が下がりやすくなるため、それに対抗しようとして額を引き上げる力が働きます。

夕方になると額のシワが目立つようになったり、頭痛がしたりする場合、眼精疲労からくる前頭筋の過緊張が疑われます。デジタルデバイスとの付き合い方を見直すことも、額のシワ予防には重要です。

主な原因と背景要因

  • コンタクトレンズの長期使用
    まぶたの内側から挙筋腱膜を刺激し続け、腱膜が薄く伸びてしまうことでまぶたが下がりやすくなります
  • 慢性的なストレスと食いしばり
    ストレスを感じると無意識に歯を食いしばり、側頭筋や前頭筋を含む顔全体の筋肉が緊張状態になります
  • 視力の低下や矯正不足
    度が合わない眼鏡やコンタクトを使用しているとピントを合わせようとして目を細めたり見開いたりを繰り返し、眉周りの筋肉を酷使します

加齢に伴う目の周りの筋力と皮膚弾力の低下

年齢を重ねると体の筋力が衰えるのと同様に、まぶたを持ち上げる眼瞼挙筋の力も弱くなります。また、まぶたの皮膚自体がたるんで余剰皮膚となり、まつ毛の上に覆いかぶさってくることもあります。

これを「眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)」と呼びますが、この状態になると物理的に視界が遮られるため、やはり眉を上げて皮膚を持ち上げようとする反射が起きます。

若い頃は皮膚に弾力があるため、多少眉を上げてもシワは戻りますが、加齢によって皮膚の復元力が低下しているため、シワが定着しやすくなります。

筋力の低下と皮膚の老化という二重の要因が重なることで額の横ジワは年々深く、長くなっていくのです。自身のまぶたの状態を客観的に把握し、どの程度前頭筋に頼ってしまっているかを知ることが大切です。

自分の前頭筋依存度をチェックする方法

額のシワを改善するためには、まず自分がどれくらい前頭筋を使って目を開けているのかを自覚することが必要です。多くの人は無意識に行っているため、簡単なテストを行うことでその癖を可視化できます。

ここでは特別な器具を使わずに自宅ですぐにできるセルフチェックの方法を紹介します。鏡を用意して、普段通りの自然な状態で確認してみましょう。

鏡を使ったセルフチェックの具体的な手順

まずは鏡を顔の正面に置き、リラックスした状態で自分の顔を映します。このとき顎を引いたり上げたりせず、真っ直ぐ前を見ることがポイントです。そして、以下の手順で目の動きと額の状態を観察します。

最初に軽く目を閉じ、ゆっくりと目を開けていきます。このとき、黒目が見えるようになる過程で眉毛が一緒に上に動いていないかを確認してください。

もし、目が開くと同時に眉毛がピクリと上がったり、額にうっすらと横線が入ったりする場合は、前頭筋を使って目を開けている証拠です。正常な開眼動作であれば、眉毛の位置はほとんど変わらず、まぶたの縁だけが上に移動します。

眉毛と目の距離が目を閉じたときと開けたときで大きく変化する場合、前頭筋依存度が高いと言えます。

額を押さえて目を開ける固定テスト

より明確に判定するために、手を使って前頭筋の動きを強制的に止めるテストを行います。

まず、両手の手のひら、または指の腹を額全体に当て、眉毛が動かないようにしっかりと押さえます。この状態で、目を普段通りに開けようとしてみてください。

もし、額を押さえた状態だと「目が開けにくい」「まぶたが重く感じる」「視野が狭くなった気がする」と感じるならば、あなたは普段、前頭筋の力に頼って目を開けています。

逆に、額を押さえてもスムーズに目が開き、視界も変わらないのであれば、眼瞼挙筋が正しく機能しており、前頭筋への依存は少ないと判断できます。

目が開けにくいと感じた方は前頭筋を使わなければまぶたが持ち上がらない状態、すなわち眼瞼下垂の傾向がある可能性が高いと考えられます。

チェック結果からわかる状態と対策の方向性

チェック時の反応想定される状態推奨されるアプローチ
額を押さえても普通に開く正常(前頭筋依存なし)現在のシワは乾燥や表情癖が主因。保湿と表情の意識付けで改善を目指す
少し重いが開けられる軽度の前頭筋依存眼輪筋トレーニングや意識的なリラックスで癖を修正する余地あり
全く開かない・非常に重い重度の依存・眼瞼下垂自力での改善は困難。美容医療や形成外科での専門的な治療を検討する

頭痛や肩こりとの関連性を確認する

前頭筋の酷使は顔の見た目だけでなく、身体的な不調として現れることもあります。

慢性的な頭痛、特に夕方になると額やこめかみが締め付けられるような痛みを感じる「緊張型頭痛」がある場合、前頭筋の過緊張が原因である可能性があります。

また、前述したように前頭筋は首や肩の筋肉とも筋膜でつながっているため、ひどい肩こりや首の痛みに悩まされている場合も額の使いすぎが影響していることが少なくありません。

お風呂上がりなどリラックスしているときはシワが薄くなるが、仕事中や集中しているときに頭痛と共にシワが深くなるという自覚があるなら、筋肉の緊張をほぐすケアがシワ改善と体調管理の両面で有効です。

額のシワと身体の不調を切り離して考えるのではなく、繋がった一つのサインとして捉える視点を持つことが大切です。

日常生活でできる前頭筋の力を抜くトレーニング

前頭筋への依存度が軽度から中程度であれば、日々のトレーニングや意識の持ち方を変えることで筋肉の使い癖を修正し、額のシワを軽減することが期待できます。

重要なのは「額を動かさない」ことと「まぶたの筋肉を使う」ことを脳に再学習させることです。即効性はありませんが、継続することで確実な予防効果を発揮します。

目の周りの眼輪筋を意識して使う練習

本来、まぶたの開閉に関わるのは眼輪筋(がんりんきん)や眼瞼挙筋です。前頭筋を使わずにこれらの筋肉だけを動かす感覚を掴むトレーニングを行いましょう。

まず、片手で額を軽く押さえて眉毛が動かないように固定します。その状態で、まぶたの力だけで目を細めたり、見開いたりする動作を繰り返します。

「眩しいものを見る目」をするように下まぶたを引き上げ、次にカッと目を見開くのではなく、黒目を大きく見せるイメージで上まぶたを引き上げます。このとき額が動こうとするのを手で感じながら、それを抑制するよう意識します。

これを1日1回、数セット行うことで、脳が「額を使わなくても目は開く」ということを学習し始めます。

頭皮のマッサージで緊張をほぐす

固まってしまった前頭筋と帽状腱膜をほぐすことで、額の皮膚にかかるテンションを緩めることができます。シャンプーの時や入浴後の体が温まっているタイミングで行うのが良いでしょう。

指の腹を使って髪の生え際から頭頂部に向かって、頭皮を動かすように優しくマッサージします。特に額の上の生え際部分は前頭筋の付着部であり、凝り固まりやすい場所です。ここを念入りにほぐすことで眉毛が自然と下がりやすくなり、額の緊張が和らぎます。

ただし、皮膚を強くこすると摩擦で肌を傷めるため、あくまで「頭皮を骨からずらす」ようなイメージで圧をかけることがポイントです。

癖を治すための日常的な意識ポイント

  • PC画面の高さを調整する
    モニターの位置が低いと顎が上がり、薄目で画面を見る姿勢になりがちです。目線の高さに画面を合わせることで、自然な目の開きを保てます。
  • 定期的に「顔の脱力」を行う
    仕事の合間に一度目を閉じ、顔全体の力を抜いて深呼吸します。眉間の力が抜け、額が滑らかになる感覚を記憶させます。
  • コンタクトレンズの度数を見直す
    見えにくい状態を放置しないことが、眉をひそめたり上げたりする動作を減らす一番の近道です。適切な矯正を行うことで、目の筋肉への負担を減らします。

美容医療によるアプローチと前頭筋への効果

セルフケアだけでは改善が難しい深いシワや、すでに刻まれてしまった真皮の溝に対しては、美容医療の力を借りるのが効率的で確実な手段です。

現代の美容医療では、メスを使わずにシワを目立たなくする治療法が確立されており、それぞれの症状や原因に合わせて選択することができます。こ

こでは代表的な治療法と、それが前頭筋由来のシワにどう作用するかを解説します。

ボツリヌス療法で筋肉の動きを一時的に抑制

額の横ジワ治療において最も一般的で、かつ高い効果を発揮するのが「ボツリヌス療法(ボトックス注射など)」です。

この治療はボツリヌス菌から抽出したタンパク質を前頭筋に注入し、神経から筋肉への指令をブロックすることで、筋肉の収縮を弱めるものです。

強制的に前頭筋が動かなくなるため、眉を上げようとしても上がらず、結果として額の皮膚が折り畳まれなくなります。シワができる原因動作そのものを止めるため、予防効果も非常に高い治療です。

しかし、眼瞼下垂がある人が安易に額にボツリヌス注射を行うと眉毛が上がらなくなることでまぶたが重く被さり、かえって目が開けづらくなるという副作用のリスクがあります。

そのため、医師による正確な診断と、注入量や位置の微調整が極めて重要です。

ヒアルロン酸注入による溝の物理的な修復

すでに筋肉を動かしていなくてもクッキリと線が残ってしまっている「刻まれたシワ」に対しては、ヒアルロン酸注入が有効です。

ジェル状のヒアルロン酸をシワの真下の皮膚内に注入し、内側から溝を盛り上げることで表面を平らにします。前頭筋の動き自体を止めるわけではないため、表情への違和感が出にくいのが特徴です。

また、額全体にヒアルロン酸を注入して丸みを持たせることで皮膚に張りを持たせ、シワを伸びやすくする手法もあります。

ただし、原因である筋肉の動きがそのままだと、ヒアルロン酸が吸収された後にまた同じ場所にシワができやすいため、ボツリヌス療法と併用して行うことも多くあります。

照射系治療による肌のハリ向上

針を使う治療に抵抗がある場合や、初期の浅いシワに対しては、高周波(RF)やハイフ(HIFU)、レーザーなどの照射系治療が選択肢に入ります。

これらは皮膚の真皮層に熱エネルギーを与え、コラーゲンの生成を促進させることで肌の密度を高め、ハリを出してシワを目立たなくするものです。

筋肉への作用はありませんが、皮膚自体が厚く丈夫になることで前頭筋の収縮による折り畳みに耐えられる肌を作ることができます。

即効性は注入治療に劣りますが、ダウンタイムが少なく、顔全体のアンチエイジング効果も期待できる点がメリットです。

主な治療法と特徴の比較

治療法主な作用機序適している症状・タイプ
ボツリヌス療法筋肉の動きを止める表情を作った時にできる深いシワ、予防目的
ヒアルロン酸注入溝を内側から埋める無表情でも残っている刻まれたシワ
再生医療(PRP等)組織の修復・再生自然な改善を望む場合、皮膚が薄い人

スキンケアと生活習慣で見直す額のエイジングケア

美容医療を受ける受けないに関わらず、日々のスキンケアと生活習慣の質を高めることは額のシワ対策の基盤となります。

皮膚の土台が整っていれば、筋肉の動きによるダメージを最小限に抑えることができ、治療の効果も持続しやすくなります。ここでは、成分選びや生活の中で意識すべきポイントについて掘り下げます。

保湿成分セラミドとレチノールの活用

額の皮膚は皮脂分泌が比較的多いゾーンですが、同時に紫外線や外気の影響を受けやすく、内部乾燥(インナードライ)を起こしやすい場所でもあります。乾燥した皮膚は紙のように硬くなり、シワが定着しやすくなります。

まずは、角質層のバリア機能を高める「セラミド」配合の化粧水や乳液で、徹底的に保湿を行うことが大切です。

さらに、シワ改善効果が認められている有効成分「レチノール(ビタミンA誘導体)」や「ナイアシンアミド」を取り入れることを強くお勧めします。

レチノールはターンオーバーを促進し、真皮のコラーゲン産生をサポートするため、厚みのあるふっくらとした皮膚を育ててくれます。ただし、レチノールは刺激を感じる場合があるため、低濃度から始め、夜のケアを中心に使用するなど工夫が必要です。

紫外線対策で真皮層を守る重要性

「光老化」という言葉がある通り、肌の老化原因の約8割は紫外線と言われています。特にUVA(紫外線A波)はガラスを通過して真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを破壊して「シワ・たるみ」の直接的な原因となります。

額は顔の中でも高く突出しており、日光を浴びやすい部位です。前髪があるからといって油断せず、額の生え際までしっかりと日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。

雨の日や曇りの日、室内であってもUVAは降り注いでいます。日々の紫外線ダメージの蓄積を防ぐことこそが、最もコストのかからない、かつ強力なシワ予防策となります。

質の高い睡眠と栄養摂取のバランス

皮膚の修復は寝ている間に行われます。成長ホルモンが分泌される睡眠時間を確保することはダメージを受けた真皮層をリセットするために必要です。

また、枕の高さが合っていないと、寝ている間に首や額にシワが寄る姿勢になってしまうことがあるため、寝具の見直しも有効です。

食事面では、皮膚の材料となる「タンパク質」、コラーゲン生成を助ける「ビタミンC」、抗酸化作用のある「ビタミンE」などを意識して摂取します。

糖質の摂りすぎは「糖化」を招き、コラーゲンを硬く変性させて肌の弾力を奪うため、甘いものや炭水化物の過剰摂取には注意が必要です。体の中からのケアが最終的に肌の弾力として表れます。

スキンケア成分と期待できる働き

注目成分主な働きと効果選び方のポイント
レチノール(純粋・誘導体)ターンオーバー促進、コラーゲン産生「シワ改善」の効能表示がある医薬部外品を選ぶのが確実
ナイアシンアミド真皮のコラーゲン生成促進、美白刺激が少なく敏感肌でも使いやすい。朝晩使用可能
ペプチド(アルジルリン等)表情筋の緊張緩和(塗るボトックス)表情ジワに特化した美容液に含まれることが多い

前頭筋を使わずに目を開けるための身体感覚の習得

最終的に目指すべきは、前頭筋に頼らずとも自然に目が開き、額がリラックスしている状態を「当たり前」にすることです。これは一種の身体操作の再学習であり、自転車に乗る練習と同じように、感覚を体に覚え込ませる必要があります。

一朝一夕にはいきませんが、ふとした瞬間の意識の積み重ねが、将来のシワの深さを大きく左右します。

眉毛を上げない意識付けのポイント

日常生活の中で、自分が眉を上げている瞬間に気づくことがスタートです。「話しているとき」「驚いたとき」「マスカラを塗るとき」など、特定の場面で眉が上がっていませんか?気づいた瞬間に、ふっと力を抜いて眉を下ろす動作を行ってください。

また、鏡の前で「眉を動かさずに目を大きく開ける」練習をする際、最初は指で眉を押さえても構いません。指を離しても眉が上がらないギリギリの目の開き具合を探り、その時のまぶたの筋肉の感覚を覚えます。

「おでこは鉄板のように硬く動かないもの」とイメージするのも効果的です。

リラックス状態を作る呼吸法

顔の筋肉の緊張は呼吸の浅さと連動しています。何かに集中して眉間にシワが寄っているとき、呼吸は浅く止まりがちです。

深い呼吸、特にゆっくりと息を吐くことに意識を向けると、副交感神経が優位になり、全身の筋肉の緊張が緩みます。

「鼻から吸って、口から長く吐く」深呼吸を行う際、吐く息に合わせて顔のパーツが重力に従って下へ落ちていくような感覚を持ってください。眉間が広がり、額の皮膚が緩んでいくのを感じられたら成功です。

このリラックス状態の顔を「基本の顔」として脳にインプットしていきます。

動作の修正と定着のための比較

場面・動作やりがちなNG動作目指すべきOK動作
遠くを見るとき顎を上げて眉を引き上げる顎を引き、まぶたの力だけで見る
驚いた表情額全体を波打たせる目だけを大きく見開く
PC作業中猫背で顔を突き出し、眉を寄せる背筋を伸ばし、顔の力を抜く

よくある質問

若い頃から額にシワがあるのはなぜですか?

10代や20代でも額にシワがある場合、主な原因は「骨格」や「まぶたの先天的な形状」にあります。

眼球に対して眼窩(目の入っている骨のくぼみ)が浅かったり、生まれつきまぶたの皮膚が厚く被さっていたりすると、幼少期から無意識に眉を上げて視界を確保する癖がついていることがあります。

また、極度の乾燥肌やアトピー性皮膚炎などで皮膚の柔軟性が低い場合も早い段階でシワが刻まれやすくなります。

この場合、単なる加齢現象ではないため、早めに専門医に相談し、適切なアプローチを探ることが大切です。

マッサージをやりすぎると逆効果になりますか?

はい、やりすぎは逆効果になるリスクがあります。

皮膚を強く擦るようなマッサージは摩擦によって角層を傷つけ、乾燥や色素沈着を招くだけでなく、皮膚の繊維組織を引っ張りすぎてたるみを悪化させる可能性があります。

特に額の皮膚は薄いため注意が必要です。マッサージを行うなら皮膚表面を擦るのではなく、皮膚を動かさずにその下の筋肉を捉えて「圧をかける」指圧のような方法で行ってください。

また、オイルやクリームをたっぷりと使い、摩擦を最小限に抑えることも重要です。

眼瞼下垂の手術をすれば額のシワは消えますか?

眼瞼下垂の手術(眼瞼挙筋前転法など)を行うと、まぶたの開きが良くなるため、前頭筋を使って眉を上げる必要がなくなります。その結果、新たなシワができるのを防ぐ効果は非常に高いと言えます。

また、常に緊張していた筋肉がリラックスするため、浅いシワであれば目立たなくなることも期待できます。

しかし、長年の癖ですでに真皮層まで深く刻まれてしまった深い溝に関しては、手術だけで完全に消すことは難しく、ヒアルロン酸注入やレーザー治療などの追加ケアが必要になる場合もあります。

ボトックスを打ち続けるとどうなりますか?

ボトックス(ボツリヌス療法)を定期的に継続することで前頭筋が使われない期間が長くなり、筋肉自体が少しずつ痩せて(廃用性萎縮)、力が弱まっていきます。

これは悪いことではなく、結果として「眉を上げる癖」そのものが矯正され、注射の効果が切れた後も以前ほどシワが寄らなくなるというメリットがあります。また、シワが折れ曲がる回数が減るため、将来的な深いシワの予防にもなります。

ただし、適切な間隔と量を守らずに頻回に打ちすぎると、抗体ができて効果が出にくくなる可能性もあるため、信頼できる医師の管理下で継続することが大切です。

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この記事を書いた人

Dr.芝容平のアバター Dr.芝容平 Pono clinic院長

Pono clinic 院長 / 日本美容外科学会認定専門医 芝 容平(しば ようへい)

防衛医科大学校卒業後、皮膚科医として研鑽を積み、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得(〜2022年)。その後、大手美容外科にて院長や技術指導医を歴任し、多数の医師の指導にあたる。 「自分の家族や友人に勧められる、誠実で質の高い美容医療」を信条とし、2023年にPono clinicを開業。特にライフワークとする「切らないクマ治療(裏ハムラ・裏ミッドフェイスリフト)」や中顔面の若返り手術において、医学的根拠に基づいた高い技術力に定評がある。

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