オトガイ筋の緊張と梅干しジワ|顎に凸凹ができる原因とフェイスラインへの影響

鏡を見たときにふと気付く顎のザラつきや、梅干しのような凸凹としたシワ。これは単なる加齢による肌の変化ではなく、顎先にある「オトガイ筋」という筋肉が過剰に緊張することで生じる現象です。
無意識のうちに行っている食いしばりや口呼吸、さらには骨格的な要因が複雑に絡み合い、フェイスラインの崩れや不機嫌そうな印象を作り出してしまいます。
本記事では、なぜ顎に梅干しジワができるのか、その根本的な原因を解き明かすとともに、美容的な観点から見たリスク、そして今日から始められる具体的な対策について網羅的に解説します。
自分の顎の状態を正しく理解し、滑らかで美しい横顔を取り戻すための知識を持ち帰ってください。
オトガイ筋の過剰な緊張が引き起こす梅干しジワの正体
顎先に現れる凸凹としたシワ、いわゆる「梅干しジワ」の正体は下唇のすぐ下にあるオトガイ筋が過度に収縮し、硬くなっている状態そのものです。
通常、リラックスしている時の顎は滑らかですが、この筋肉が常に力を入れている状態が続くと皮膚が内側から引っ張られて特有の凹凸が形成されます。ここでは、この筋肉の特性とシワができる構造について詳しく解説します。
顎に現れる特有の凸凹と皮膚の状態
顎にできる梅干しジワは笑ったときや話したときに一時的にできる表情ジワとは異なり、無表情のときでも存在感を示すことがあります。
皮膚の表面がボコボコと波打つような形状になり、まるで梅干しの種のような質感に見えることからその名が付けられました。この状態は皮膚そのもののたるみというよりも、皮下にある筋肉の形状がダイレクトに表面に浮き出ている現象です。
皮膚の下にあるオトガイ筋は下顎の骨から皮膚に向かって放射状に伸びています。この筋肉がギュッと収縮すると付着している皮膚も一緒に引き込まれます。
通常の表情筋は骨と骨をつないでいることが多いですが、オトガイ筋は骨と皮膚をつないでいるため、筋肉の緊張が皮膚の表面形状に直結しやすいという特徴を持っています。
そのため、筋肉が慢性的に緊張していると常に顎が凸凹とした状態に固定されてしまい、メイクでも隠しきれない影を作ってしまいます。
さらに、この状態を放置すると皮膚の弾力を保つコラーゲンやエラスチン繊維にも負担がかかります。常に折り畳まれた状態の皮膚はやがて深い刻まれたシワへと変化し、筋肉の力を抜いても凸凹が消えにくい状態へと進行するリスクがあります。
表情筋の中でも特殊なオトガイ筋の働き
オトガイ筋は顔に多数存在する表情筋の中でも非常にユニークな役割を担っています。主な働きは下唇を上に持ち上げ、前方に押し出すことです。
例えば不満があるときに口を尖らせたり、何かを飲み込む際に唇を閉じたりする動作で使います。下顎の先端部分に位置し、比較的小さな筋肉ですが、その力は意外と強力です。
本来、口を閉じるときは口輪筋や咀嚼筋が協調して働きますが、骨格や歯並びの影響で口が閉じにくい場合、オトガイ筋が過剰に頑張って下唇を持ち上げようとします。これを「代償運動」と呼びます。本来の役割以上に酷使されたオトガイ筋は常にパンプアップしたような状態になり、肥大化していきます。
また、オトガイ筋は感情表現にも深く関わっています。緊張したり、ストレスを感じたりして奥歯を噛み締めると、連動してオトガイ筋にも力が入ります。
つまり、物理的な口の閉じにくさだけでなく、精神的な緊張状態もこの筋肉の硬さに影響を与えるのです。
加齢だけではない若い世代にも増えている背景
かつて、顎の梅干しジワは加齢に伴う筋肉の衰えや皮膚の菲薄化によって目立つものと考えられていました。しかし近年では20代や30代といった若い世代でも悩む人が急増しています。
これには現代特有のライフスタイルが大きく関与しています。スマートフォンの長時間使用による姿勢の悪化や、マスク生活による口呼吸の定着などは、若年層の顎周りの筋肉バランスを崩す大きな要因です。
下を向いて画面を見続ける姿勢は下顎を奥に押し込む力を働かせ、口を閉じるためにより強いオトガイ筋の収縮を必要とします。
また、SNSなどで自分の顔を写真や動画で見る機会が増えたことで、これまで気にならなかった顎の凸凹に敏感になる人が増えている側面もあります。
正常な顎と緊張した顎の状態比較
| 比較項目 | 正常なリラックス状態 | オトガイ筋が緊張した状態 |
|---|---|---|
| 表面の質感 | 滑らかで丸みを帯びている | 凹凸があり、ザラザラした見た目 |
| 口を閉じた時 | 軽く上下の唇が触れ合う | 顎先に力が入り、梅干し状のシワが出る |
| 横顔のライン | 顎先が自然に前方へ出ている | 顎が後退して見え、平坦な印象になる |
無意識の習慣が招く顎の緊張と凸凹の発生要因
オトガイ筋の緊張は突発的に起こるものではなく、日々の積み重ねによって形成されます。多くの人は自分が顎に力を入れていることに気付いていません。
しかし、日常生活のふとした瞬間の癖や、生まれ持った骨格的な条件が、知らず知らずのうちにオトガイ筋を酷使し、梅干しジワの原因を作り出しています。ここでは、その主要な要因を掘り下げます。
口呼吸や食いしばりが与える筋肉への負担
口呼吸はオトガイ筋の緊張を招く最大の要因の一つです。
口が常に開いている状態から唾液を飲み込む際や会話の区切りで口を閉じようとすると、下顎を無理やり持ち上げる必要があります。この動作の繰り返しがオトガイ筋にとって筋トレのような負荷となり、筋肉を肥大化させてしまいます。
また、ストレス社会といわれる現代において、多くの人が無意識に行っているのが「食いしばり」です。仕事中に集中している時や睡眠中、上下の歯を強く接触させていると、咀嚼筋である咬筋だけでなく、顎先のオトガイ筋にも強い力が伝播します。
特にTCH(歯列接触癖)と呼ばれる、弱い力でも長時間上下の歯が触れている癖は、筋肉を休まる暇なく緊張させ続けるため、非常に厄介です。
骨格的な特徴と歯並びが及ぼす物理的影響
努力だけでは改善が難しいのが、骨格や歯並びの問題です。特に「下顎後退症」といって下顎が上顎よりも後ろに下がっている場合や、「出っ歯(上顎前突)」、「開咬(オープンバイト)」の状態にある人は、構造的に口を閉じることが困難です。
通常の位置よりも唇同士の距離が遠いため、口を閉じるためには下唇を大きく引き上げる必要があります。この「足りない距離」を埋めるために、オトガイ筋が常にフル稼働することになります。
このような骨格的な特徴を持つ人は子供の頃から無意識にオトガイ筋を使い続けているため、若くして深い梅干しジワが定着しているケースが少なくありません。
姿勢の悪さとスマートフォン使用時の顎への負荷
現代病とも言える「スマホ首(ストレートネック)」や猫背も、顎の緊張と密接に関係しています。
頭が体の軸より前に出ると首の前側の筋肉が引っ張られ、下顎が後下方に引っ張られる力が働きます。この状態で口を閉じようとすると、通常よりも強い力が必要です。
さらに、下を向いて画面を見る姿勢は二重顎の原因になるだけでなく、舌の位置を低下させます。舌が正しい位置(上顎)にないと、口周りの筋肉のバランスが崩れ、結果としてオトガイ筋への依存度が高まります。
デスクワーク中の姿勢や、リラックスタイムのスマホ操作姿勢を見直すことは、顎の緊張を解くために極めて重要です。
顎の緊張を招く生活習慣の具体例
- 何かに集中しているときに無意識に奥歯を噛み締めている
- 鼻炎や花粉症があり、日常的に口で呼吸をしている時間が長い
- 寝ている間に歯ぎしりをしていると家族に指摘されたことがある
- スマートフォンを見るとき、顔を下に向けて長時間操作している
- 飲み物を飲むときや食事の際に顎先に力が入る癖がある
顎のシワがフェイスラインと見た目年齢に与える影響
顎の梅干しジワは単に「肌が凸凹している」という局所的な問題にとどまりません。顎というパーツは顔の輪郭の終着点であり、ここの形状が変わることで顔全体の印象やフェイスラインのシャープさ、さらには見た目年齢にまで大きな影響を及ぼします。
オトガイ筋の緊張がもたらす美容的なデメリットについて解説します。
輪郭がぼやけて二重顎に見えるリスク
オトガイ筋が収縮して硬くなると、顎の先端が上方向に引き上げられます。すると、本来あるべき顎の長さが短縮され、顔の下半分が詰まったような印象になります。
この「顎の短縮」は、フェイスラインの皮膚を余らせる原因となり、結果として二重顎を助長します。
シャープなフェイスラインを作るには、顎先に適度な長さと前方への突出が必要です。しかし、梅干しジワができるほど緊張した顎は、丸く平坦になりがちです。
これにより、首と顔の境目が曖昧になり、実際の体重以上に太って見えたり、顔が大きく見えたりする原因となります。輪郭がぼやけることは、若々しさを損なう大きな要因です。
不機嫌で怒っているような印象を与える心理的効果
顔の表情は対人関係において言葉以上の情報を伝えます。
顎に梅干しジワがある状態は口を「へ」の字に結んでいるように見えるため、周囲に対して「不機嫌そう」「怒っている」「我慢している」といったネガティブな印象を与えやすくなります。
本人はリラックスしているつもりでも、顎に力が入っているだけで近寄りがたい雰囲気が出てしまうのです。また、緊張している顎は口角を下げる筋肉とも連動しやすいため、ますます不満げな表情が定着してしまいます。
このように、オトガイ筋の状態は本人の性格とは無関係に、第一印象を左右する重要な要素となります。
Eラインの崩れと横顔の美しさへのダメージ
横顔の美しさの指標として知られる「Eライン(エステティックライン)」は、鼻先と顎先を結んだ直線のことです。理想的な横顔はこのラインの内側に唇が収まっている、あるいはライン上にあるとされています。
しかし、オトガイ筋が緊張して顎が後ろに引っ込んだり、平坦になったりすると、このEラインが崩れます。顎先がラインより大きく後退することで相対的に口元が突出して見え、いわゆる「口ゴボ」のような印象を強めてしまうことがあります。
正面からの見た目だけでなく、横顔のバランスを整えるためにも、顎の緊張を解き、本来の顎の高さを取り戻すことが重要です。
顎の緊張が与える印象の変化
| 影響する部位 | 緊張による視覚的変化 | 第三者に与える印象 |
|---|---|---|
| フェイスライン | 顎が短くなり、輪郭が丸くぼやける | 顔が大きく見える、太って見える |
| 口元 | 口角が下がり、への字口になりやすい | 不満がある、怒っている、頑固そう |
| 横顔 | 顎先が後退し、口元が出っ張る | 品がない、幼稚に見える、洗練されていない |
オトガイ筋の凝りをほぐすセルフケアとマッサージ
凝り固まったオトガイ筋を緩めるには、日々のセルフケアが有効です。ただし、皮膚を闇雲に摩擦するのではなく、深層にある筋肉に対して的確にアプローチすることが大切です。
ここでは、自宅で簡単に実践できるマッサージとストレッチの方法を紹介します。毎日継続することで筋肉の緊張が解け、本来の顎のラインを取り戻す手助けとなります。
指の関節を使った深層筋へのアプローチ
オトガイ筋は比較的深い部分にあるため、表面を撫でるだけでは効果が薄いです。効果的なのは、指の関節を使って筋肉を「ほぐす」ことです。
まず、人差し指を鍵型に曲げ、第二関節を顎の先端に当てます。そこから顎の骨を感じながら、グリグリと円を描くように優しく圧をかけます。特に硬さを感じる部分は筋肉が凝り固まっている証拠です。
痛気持ちいい程度の強さで、筋肉の繊維を断ち切るように横方向や縦方向に小さく動かします。皮膚を擦るのではなく、皮膚の上から筋肉を捉えて動かすイメージで行うと、皮膚への負担を最小限に抑えられます。オイルやクリームを塗って滑りを良くしてから行うことも大切です。
口輪筋と連動させたストレッチの重要性
オトガイ筋は口の周りを囲む口輪筋と密接に関係しています。そのため、オトガイ筋単体だけでなく、口周り全体を動かすストレッチが効果的です。代表的なのが、口の中に空気を入れて膨らませる運動です。
まず、口を閉じたまま下唇と歯茎の間に空気を目一杯溜め込みます。内側からオトガイ筋を伸ばすように意識し、そのまま5秒間キープします。
次に空気を上唇側、右頬、左頬へと移動させ、口周りの筋肉全体をストレッチします。これを数セット繰り返すことで、縮こまった筋肉が内側からストレッチされ、血流が改善します。
入浴中や就寝前に行うリラックス効果の高いケア
筋肉は温めると緩みやすくなる性質があります。そのため、入浴中や入浴後の体が温まっているタイミングでのケアは非常に効率的です。
湯船に浸かりながら、顎先から耳の下に向かってフェイスラインを流すリンパマッサージを組み合わせると、老廃物の排出も促され、むくみ改善にもつながります。
また、就寝前は1日の緊張をリセットする大切な時間です。仰向けになり、全身の力を抜いた状態で軽く口を開けて顎の力を抜く練習をします。
意識的に「顎の力を抜く」感覚を脳に覚えさせることで、睡眠中の食いしばりを軽減する効果も期待できます。
効果的なセルフケアのポイント
- マッサージを行う際は必ずクリームやオイルを使用し、肌への摩擦ダメージを防ぐこと
- 「痛い」と感じるほど強く押しすぎず、「痛気持ちいい」強度を保つこと
- 呼吸を止めずに、リラックスした状態で深く呼吸しながら行うこと
- 一度に長時間行うよりも、毎日短時間でも継続することを優先すること
美容医療によるアプローチと期待できる変化
セルフケアだけでは改善が難しい頑固な梅干しジワや骨格的な要因が強い場合には、美容医療の力を借りることも選択肢の一つです。医療的な介入を行うことで物理的に筋肉の動きを止めたり、形状を整えたりすることが可能です。
ここでは、代表的な治療法であるボツリヌス療法とヒアルロン酸注入について、その特徴と効果を解説します。
ボツリヌス療法による筋肉の弛緩作用
オトガイ筋の過剰な緊張を解くために最も一般的かつ即効性のある治療が、ボツリヌス療法(通称ボトックス注射)です。
この治療は筋肉の収縮を指令する神経伝達物質の放出を抑制する薬剤を患部に注入することで、筋肉の動きを一時的に弱めるものです。
注射から数日〜1週間程度で効果が現れ始め、ギュッと力を入れても梅干しジワができなくなります。筋肉の緊張が取れることで平坦だった顎先が自然に前方へ出て、フェイスラインがシャープになる効果も期待できます。
また、無意識の力みが解消されるため、食いしばりの緩和にも寄与することがあります。治療時間は短く、ダウンタイムもほとんどないため、手軽に受けられる施術として人気があります。
ヒアルロン酸注入による形状の形成とシワの改善
ボツリヌス療法が「筋肉の動き」を止めるのに対し、ヒアルロン酸注入は「形状」を作る治療です。顎が小さく後退している場合や皮膚の折れ癖が深くなってしまった場合に適しています。
硬めのヒアルロン酸を顎先に注入することで、物理的に顎を作り、Eラインを整えることができます。
ヒアルロン酸が皮膚を下から持ち上げることで表面のシワが伸びて目立たなくなります。また、適切な位置にボリュームを足すことで皮膚がピンと張り、オトガイ筋が収縮しにくい環境を作ることができます。
ボツリヌス療法と併用することで、より美しく、持続性の高い仕上がりを目指すことも可能です。
施術の持続期間とメンテナンスの頻度
美容医療は永続的なものではないため、定期的なメンテナンスが必要です。ボツリヌス療法の効果は個人差がありますが、一般的に3ヶ月から半年程度持続します。
効果が切れてくると徐々に筋肉の動きが戻ってくるため、完全に元に戻る前に再注入することで、筋肉が再び肥大化するのを防ぐことができます。
ヒアルロン酸の場合は製剤の種類にもよりますが、1年から1年半程度かけて徐々に体内に吸収されていきます。完全に無くなる前に追加注入を行うことで、形状を維持しやすくなります。
医師と相談し、自分のライフスタイルや予算に合わせた計画的な治療スケジュールを立てることが大切です。
主な治療法の比較
| 治療法 | 主な作用 | こんな人に向いている |
|---|---|---|
| ボツリヌス療法 | 筋肉の過剰な動きを止める | 力を入れた時だけシワが出る、無意識に力が入る |
| ヒアルロン酸注入 | ボリュームを出し形状を作る | 顎が小さい・後退している、真顔でもシワがある |
| 併用治療 | 筋肉を緩めつつ形を整える | 確実な変化を求めたい、Eラインを整えたい |
日常生活で意識すべき顎の緊張を解く予防策
美容医療やマッサージで一時的に改善しても、根本的な原因である「癖」が治らなければ、梅干しジワは再発してしまいます。
美しい顎を維持するためには日常生活の中で無意識に行っている習慣を見直し、顎に負担をかけない環境を作ることが重要です。今日から始められる予防策を解説します。
舌の位置(ミューイング)を正して口呼吸を防ぐ
顎の緊張を防ぐための基本は、正しい舌の位置をキープすることです。安静時に舌の全体が上顎の天井部分(口蓋)にぴったりと吸着している状態が理想です。これを「ミューイング」とも呼びます。
舌が上顎にあると口は自然と閉じやすくなり、オトガイ筋の力を使わずに唇を合わせることができます。逆に舌が下がっていると、気道を確保するために口が開きやすくなり、口呼吸になります。
日常的に「舌は上顎」と意識するだけで顎周りの筋肉の使い方が劇的に変わり、梅干しジワの予防につながります。
ストレス管理と噛み締め癖の自覚
多くの人はストレスを感じると無意識に奥歯を噛み締めます。このTCH(歯列接触癖)を改善するには、まず「自分が噛み締めている」ことに気付くことが第一歩です。
仕事中のパソコンのモニターや、台所の壁など、よく目にする場所に「歯を離す」「力を抜く」といったメモを貼るのも有効な方法です。
また、意識的に深呼吸を行い、副交感神経を優位にすることで全身の筋肉の緊張を解くことも大切です。顎の力みは全身のストレスのバロメーターでもあります。リラックスする時間を設け、心身ともに緩める習慣を持ちましょう。
正しい咀嚼法と表情筋のバランス良い使い方
食事の際の噛み方も顎への負担に影響します。片側の歯だけで噛む癖があると筋肉の付き方が左右非対称になり、片側だけ梅干しジワが強くなることがあります。左右均等に奥歯を使って噛むことを意識しましょう。
また、笑うときに顎に力を入れて口角を引く癖がある人もいます。本来、笑顔は頬の筋肉(大頬骨筋など)を使って作るものです。
鏡を見ながら顎の力を抜いて頬を持ち上げる笑顔の練習をすることで表情筋の使い方が矯正され、オトガイ筋への依存を減らすことができます。
日常生活でのチェックリスト
| 確認項目 | 理想的な状態 | 改善のアクション |
|---|---|---|
| 舌の位置 | 舌先だけでなく全体が上顎についている | 気付いた時に舌を吸い上げるように上顎に付ける |
| 歯の接触 | 上下の歯の間に1〜2mmの隙間がある | 「歯を離す」と書いた付箋を目につく場所に貼る |
| 口の閉じ方 | 唇が軽く触れ合い、顎に力が入っていない | 唇を閉じる際に、顎先を触って硬くないか確認する |
オトガイ筋の緊張と梅干しジワに関するよくある誤解
顎の梅干しジワに関しては、誤った情報や自己流の解釈が広まっていることも少なくありません。間違ったケアは効果がないばかりか、症状を悪化させる可能性もあります。
ここでは、よくある誤解を解き、正しい知識に基づいたケアの方向性を示します。
マッサージのやりすぎが逆効果になる理由
「硬い筋肉はとにかく揉めばいい」と思い込み、強い力で長時間マッサージをするのは危険です。
過度な摩擦は色素沈着(黒ずみ)を引き起こし、顎が茶色くくすんでしまう原因になります。また、皮膚を強く引っ張りすぎるとコラーゲン繊維が断裂し、たるみやシワを増長させることにもなりかねません。
マッサージはあくまで血流を良くし、緊張をほぐす補助的なものです。筋肉そのものの活動をコントロールするわけではないため、やりすぎには注意が必要です。「適度な圧」と「短時間」を守ることが大切です。
スキンケアだけで改善しようとする限界
梅干しジワを乾燥ジワと同じものと考え、高級なクリームや美容液を塗り込むだけで治そうとするケースがありますが、これには限界があります。梅干しジワの主原因は「筋肉の収縮」であり、皮膚表面の乾燥ではないからです。
もちろん、保湿をして皮膚の柔軟性を保つことはシワが深く刻まれるのを防ぐためには重要です。しかし、筋肉の動きそのものを化粧品で止めることはできません。
スキンケアはあくまで予防や現状維持のための基礎であり、根本解決には筋肉へのアプローチが必要であることを理解しておく必要があります。
歯列矯正中の顎の梅干しジワの変化
歯列矯正をすると梅干しジワが治ると考える人もいますが、これはケースバイケースです。出っ歯が解消され、口が閉じやすくなれば、オトガイ筋の負担が減りシワが改善する可能性は高いです。
しかし、矯正器具(ブラケット)の厚みによって一時的に口が閉じにくくなり、治療期間中は逆に梅干しジワが目立つようになることもあります。
また、矯正で歯並びが整っても、長年の「顎に力を入れる癖」が抜けていなければ、シワが残ることもあります。矯正は骨格的な条件を整える強力な手段ですが、筋肉の使い方の癖も同時に治していく必要があることを知っておきましょう。
注意すべき間違った認識
- 力を入れて揉みほぐせば、すぐに筋肉が柔らかくなるという思い込み
- 高価なエイジングケア化粧品を使えば、筋肉の凸凹も消えるという期待
- 歯並びさえ治せば、自動的に顎の緊張が全て解消されるという誤解
よくある質問
- ボトックス注射を打つと笑えなくなるというのは本当ですか?
-
適切な量と位置に注入すれば、笑えなくなることはありません。オトガイ筋は下唇を持ち上げる筋肉であり、笑顔を作る筋肉(頬の筋肉など)とは異なります。
ただし、注入量が多すぎたり、位置がずれたりすると口の開きに違和感が出たり、話しにくさを感じたりするリスクはゼロではありません。経験豊富な医師による施術を受けることが重要です。
- マッサージを毎日続ければ完全に消えますか?
-
マッサージは筋肉の凝りをほぐすのに有効ですが、すでに深く刻まれてしまった皮膚のシワや骨格的な要因による強い緊張を完全に消すことは難しい場合があります。
マッサージはあくまで予防や症状の緩和を目的とし、根本的な改善には生活習慣の見直しや美容医療との併用が必要になることが多いです。
- 歯列矯正をすると梅干しジワは治りますか?
-
歯列矯正によって前歯が引っ込み、物理的に口が閉じやすくなる場合は梅干しジワの大幅な改善が期待できます。
しかし、矯正後も長年の口呼吸や食いしばりの癖が残っていると、シワが完全には消えないこともあります。
矯正治療と並行して、MFT(口腔筋機能療法)などで正しい舌の位置や飲み込み方をトレーニングすることが推奨されます。
- 20代でも顎に梅干しジワができるのはなぜですか?
-
加齢だけでなく、スマートフォンの長時間使用による姿勢の悪化、ストレスによる食いしばり、口呼吸などが原因で、若い世代でもオトガイ筋が過緊張を起こすケースが増えています。
また、顎が小さい、あるいは後退しているといった骨格的な特徴がある場合、年齢に関係なく梅干しジワができやすい傾向にあります。
参考文献
HONG, Sung Ok. Cosmetic treatment using botulinum toxin in the oral and maxillofacial area: a narrative review of esthetic techniques. Toxins, 2023, 15.2: 82.
RAMAN, Swarnalakshmi, et al. Mechanism and clinical use of botulinum neurotoxin in head and facial region. Journal of Prosthodontic Research, 2023, 67.4: 493-505.
PRZYBYLSKA, Patrycja, et al. The use of botulinum toxin injection into the mentalis muscle in aesthetic medicine procedures. Journal of Face Aesthetics, 2021, 4.1: 58-64.
SEO, Kyle K. Wrinkle treatment with botulinum toxin. In: Botulinum Toxin for Asians. Singapore: Springer Singapore, 2016. p. 29-105.
NAIR, Vivek; SARKAR, Rashmi. Neurotoxin Resistance. Cosmetic Injectables in Practice: Dermal Fillers and Botulinum Toxin, 2020, 267.
YI, Kyu-Ho, et al. Novel anatomical guidelines for botulinum neurotoxin injection in the mentalis muscle: a review. Anatomy & cell biology, 2023, 56.3: 293-298.
AHMED, Abdul; FAROOK, Shahme; PERRY, Michael. Oral and maxillofacial surgery. Springer International Publishing AG, 2023.
NAZARI, Ahmad. Botulinum toxin A for chin. In: Handbook of Oral and Maxillofacial Surgery and Implantology. Cham: Springer International Publishing, 2024. p. 1-18.
